ゲイリー・ペイトン2世

2020年に1巡目2位指名したジェームズ・ワイズマンを放出

ウォリアーズはゲイリー・ペイトン2世を、ピストンズとホークス、トレイルブレイザーズを含めた4チーム間トレードという複雑な手続きを経て呼び戻した。2020年の1巡目2位で指名したジェームズ・ワイズマンと2巡目指名権5つをピストンズに譲渡することで、ブレイザーズからペイトン2世を獲得。ペイトン2世にとっては半年ぶりのウォリアーズ復帰となる。

ペイトン2世はNBAキャリア7年目の30歳。ドラフト外からジャーニーマンとしてキャリアを過ごしつつ実力を伸ばしてきた苦労人だ。ウォリアーズで2年目となった昨シーズンは、ディフェンスのスペシャリストとしての才能を発揮し、レギュラーシーズン71試合に出場。プレーオフのグリズリーズ戦で左肘を骨折する不運に見舞われたものの、ジョーダン・プールとともにセカンドユニットの中心選手としてNBA優勝に大きく貢献した。

それでもNBAの30チームで最もサラリー総額の高いウォリアーズが、ロールプレーヤーを保持し続けるのは難しい。昨シーズンの年俸が167万ドル(約2億1000万円)だったペイトン2世は、3年2600万ドル(約34億円)の契約を提示したブレイザーズに移籍することになった。

今シーズンに入るとすぐに、ウォリアーズはその選択を後悔することになる。優勝を勝ち取ったコアメンバーは変わらずとも、セカンドユニットの力が落ちると勝てなくなり、レギュラーシーズンの勝率は64.6%(53勝29敗)から50.9%(28勝27敗)へと急落。前年優勝チームがプレーオフ進出も危うい状況に陥っている。

そんなウォリアーズの補強に、ケガの癒えたペイトン2世の復帰は打ってつけだ。ただし、選択を誤った代償は小さくない。結局、ペイトン2世の3年2600万ドルの契約を引き受けるのだから、最初から契約を延長するのが最もスマートだった。その時点でワイズマンの成長に見切りをつけていれば、そのサラリーキャップを使ってペイトン2世と契約でき、指名権は残したままワイズマンを他の選手とトレードできたのだ。そして恐らく、今シーズン前半戦の苦戦も回避できただろう。

そういう意味では、ロッタリーに慣れていないウォリアーズが上位指名権を得た2020年に、ワイズマンを指名したのが失敗だった。フィジカルが強く運動能力にも恵まれたワイズマンは素材としては魅力的だが、バスケIQが足りずにウォリアーズのスタイルに最後までフィットできなかった。2020年の時点でビッグマンが必要だったのは間違いないが、ドレイモンド・グリーンの代役なり後継者に据えるには、ディフェンスよりもオフェンスを得意とするワイズマンではタイプが違いすぎた。むしろピストンズで自分らしいプレーに徹した方が、ワイズマンのキャリアは開かれるだろう。

今回のトレードは、ポジションは違えどウォリアーズの完成されたスタイルに合わない選手を放出し、合う選手を獲得したことになる。それに気付くのが遅れたために決して安くはない授業料を払うことにはなったが、ウォリアーズは長きに渡り勝ち続けながら1巡目指名権はそれなりに残しており、中長期的な強化もしやすい立場にいる。『王朝』を作り上げたボブ・マイヤーズGMも時には失敗するが、彼の手腕が優れていることに疑いの余地はない。