リバウンド改善が京都の伸びしろ、接戦へと持ち込む
今シーズンはわずかに3敗しか喫していないアルバルク東京だが、10日のホーム戦は最大17点差を最後は3点差まで追い上げられる薄氷の勝利だった。そして11日の再戦では、京都ハンナリーズが「善戦」に止まらない劇的な勝利を挙げた。
試合は典型的なシーソーゲームになる。第1クォーターが終わって時点ですでにリードチェンジは5度。田中大貴が開始直後のレイアップ、スリーポイントなど7ポイントを決めてA東京がリードを奪ったが、それでも19-18の1点差だった。
第2クォーターはお互いのオフェンスよりディフェンスが際立つ重い展開となった。京都ハンナリーズは速攻の迫力こそあったが、第2クォーターだけで5つのターンオーバーを喫するなどなかなか取り切れない。ただしディフェンスは光っていた。
浜口炎ヘッドコーチはこう説明する。「ボールを中心に守れているとは思います。このリーグになるとすごくいい選手がたくさんいて、例えば『誰のスリーポイントが怖い』となると、自分がマークする相手をハグしてボールに寄れなくなってしまうんですよね。京都は昨日も今日もローテーションが機能して、誰が出てもあまり変わらず、チーム力としてアップしている」
A東京にはディアンテ・ギャレット、田中など外角にクリエイトできる選手、得点力のある選手がいる。しかし京都はそこに対する2人目、3人目のヘルプが積極的で、「ショットクロックが少なくなってきたらスイッチしてビッグマンをつける」(浜口ヘッドコーチ)という対応もあった。それによって陣形は崩れるが、京都はローテーションがスムーズ。運動量と判断力を問われる守り方だが、それがあるからこそタレント軍団と五分の展開に持ち込めていた。
加えて10日の試合からリバウンドが改善されていた。浜口ヘッドコーチはこう説明する。「スイッチしたりすると、スリーポイントシューターだったり、他のプレイヤーにビッグマンが付かなければいけない状況になる。(その後のリバウンドに対して)飛び込まないで外で見ているケースがたくさんあった。それを改善できたのが大きかった」
残りの秒数が少なくなれば、相手は3ポイントシュートも含めて外角からシュートを打たざるを得なくなる。そのときにビッグマンがスイッチして上から圧力をかければ、相手にタフショットを強いることができる。さらに打たれたらすぐ切り替えてリバウンドを取るポジションに動く。そんなプレーを京都は忠実に実行していた。
第2、第3クォーターは両チームとも外国籍選手のオン・ザ・コート数が「1」だった。日本人ビッグマンの竹内譲次を擁するA東京に対して、京都はリバウンドでも互角に対抗。特にケビン・コッツアーはこの試合でチーム最多の11リバウンドを挙げ、インサイドの立役者になった。
京都は第2クォーター終了間際にビッグプレーが出た。岡田優介がブザーとほぼ同時にハーフライン付近から投げた3ポイントシュートが決まる、34-34と追いついてハーフタイムを迎えることになる。
ギャレットを封じたディフェンスが勝機を呼び込む
第3クォーターに入ると京都はコッツアーを中心に一時は最大7点差までリードを広げる。しかしA東京も松井啓十郎、ザック・バランスキーの連続3ポイントシュートなどでビハインドをすぐに解消。残り3秒にはギャレットが個人技でインサイドを切り裂いてレイアップを決め、53-52とA東京のリードでこの10分を終える。
終盤に入ってA東京はギャレットが独力で仕掛ける場面が増えていた。ただそれが諸刃の剣になっていた部分もあろう。浜口ヘッドコーチはギャレットをこう評する。「誰がついても変わらないというか、どのチームとやってもスコアする。相手が良い悪いかというより、彼自身の調子がどうか。パスを放すかどうか彼自身」
岡田は終盤の彼をこう振り返る。「脅威となる選手ですけれど、もしかしたらゲームを壊すかもしれないものを秘めているのかなと外から見て思っていた。最後の方はどちらかというと向こうの攻めが単調になっていたので、こちらとしても守り易かった。他の選手もギャレットに任せているんだろうなと。京都は全員でそこをヘルプする意識がありました」
複数で対応しても、狭い隙間を破っていくのがギャレットだ。ただ彼が責任を負いすぎたことで、チームとしてのオフェンス力は落ちていた。そして京都も、足が止まる、守備がルーズになるということは全くなかった。
試合の終盤には岡田の勝負強さが発揮された。64-65で迎えた第4クォーター残り3分9秒。京都は相手陣でスローインを得た。当然ながら岡田の打つ可能性の高いシチェーションだが、それは相手も分かっている。A東京はハードマーカーの菊地祥平を岡田に張り付けていた。
岡田はスロワーに近づいたと思ったらすぐに身をひるがえし、リング下を全速力横切って外にダッシュ。食い下がる菊地を岡田は振り切って、逆転3ポイントシュートを決めた。岡田はその場面をこう振り返る。
「僕はボールをもらう前が勝負の9割だと思っている。菊池は非常にディフェンスがいい選手だし、各チームのエース、シューターに必ず付いている。それはもちろん分かった上で、自分の方にアドバンテージがあるクイックネスをしっかり使って、裏をかくとか、駆け引きをしてやろうと思っていました」
終盤まで競り合う展開で繰り広げられた『駆け引き』
69-67と京都がリードして迎えた残り27秒。再びボールが岡田に回ってきた。岡田は下に空いたコースを使ってコッツァーに絶妙のパスを送る。シュートミスでA東京を突き放せなかったが、2点を仲間にプレゼントするパスだった。
岡田はマーカーのギャレットを鋭い目線で睨みつけていた。「向こうはシュートを警戒しているというのが分かったので。シュートを打ってやるという顔をしていました。それにつられたんじゃないかなと思うんですけど」
「目のフェイント」は得点につながらなかったが、勝負どころの興味深い攻防だった。
残り6秒、京都はマーカス・ダブが猛烈なチャージでトロイ・ギレンウォーターのミスを誘い、ターンオーバーに成功する。A東京はたまらずファウルゲームに持ち込むが、コッツァーがフリースローを2本きっちり沈めて試合はついに決着。リードチェンジ13回の激闘は、71-67で京都に凱歌が上がった。
岡田は言う。「絶対に倒してやると思っていましたし、この勝ちは本当にうれしい。アルバルクには7年いましたけれど、(退団後の3シーズンは)一回も勝ったことがなかった。絶対にどこかで一回やってやろうと思っていた。本当に京都に来て良かった」
浜口ヘッドコーチも気持ちは同じだった。「(岡田)優介にとっては非常に良かったと思います。どの選手も移籍した元のチームに勝ちたいという思いは強い。彼のためにも一つ勝ちたかった」
京都にとっても、岡田にとっても、会心の勝利だった。
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