止まらない後悔の念「ちゃんとした指示ができていれば、局面も変わったと思います」

ウインターカップ男子1回戦、桐光学園vs八戸学院光星の一戦は壮絶な幕切れとなった。

最初に主導権を握ったのは桐光学園。エースガードの伊藤正樹が前半だけで15得点を挙げてオフェンスを牽引すると、1対1を守り切る強固なディフェンスを披露し、36-25とリードして前半を終えた。後半に入っても2桁前後の点差で推移したが、「伊藤君を警戒していたんですけど、思った以上にやられました。フェイスガードやゾーンなど、前半で良かった部分を強度を高めてやっていったことで抑えられました」と、八戸光星の佐々木彰彦コーチが振り返ったように、伊藤の存在感を消したことで試合の潮目が変わっていった。第3クォーター終了のブザーと同時に3ポイントシュートを沈め、8点差で最終クォーターを迎えた八戸光星は、その後もじわじわと点差を縮めていき、残り2分半に古澤然の3ポイントシュートでついに逆転した。

そこから一進一退の攻防が最後まで続き、八戸光星の1点リードで迎えた残り8秒、ボールを奪われかけてファウルを犯し2本のフリースローを与えてしまう。1本目を決められて同点に追いつかれたが、2本目が外れた。そして、フリースローを与えた雪田海児がボールをプッシュし、そのまま放ったタフなフローターがタイムアップと同時にリングに吸い込まれ、68-66の劇的な逆転勝利をつかんだ。

桐光学園の伊藤は徹底マークを受け後半の得点はわずか1に留まったが、それは周りを信じ無理に打開しなかったことも影響している。実際に先発の5人全員が8得点以上を挙げ、得点に偏りは見られなかった。それでも、伊藤とともにチームを引っ張る立場の常陸匠は、どこか違和感があったと言う。「周りの得点は増えたんですけど、『どこで攻めるの?』ってみんなが困っているような感覚が僕にはありました。伊藤に任せきりになっていた部分を大会前までに直せなかったのが悔しいですし、自分がもっと指示を出していれば結果は変わったのかなと思います」

残り21秒にファウルアウトとなり、戦況をベンチで見守ることになった伊藤も自身のパフォーマンスを悔いた。「ボールが回らずに重いオフェンスを何回もしてしまいました。自分から引っかけてブレイクを出したり、もっと自分にできることがあったと思います」

ブザービーターでの決着だけに、どちらが勝ってもおかしくない素晴らしい試合だった。だが、勝者と敗者には明確な違いがあり、後者は後悔の念が尽きない。桐光学園の髙橋正幸コーチも自身の采配を責めた。「追い上げられて弱気になっり、何をやればいいか5人が明確になっていなかったです。そこでちゃんとした指示ができていれば、局面も変わったと思います。周りの下級生が苦しくなった時に上級生に頼ってしまった。みんなを落ち着かせてあげられなかったことを反省しています」

八戸光星は2年連続5回目の出場にしてうれしいウインターカップ初勝利となった。この劇的勝利を追い風にし、さらなる高みを目指していく。