サンズのロバート・サーバーはスキャンダルでクラブ売却を決断
NBAのサンズとWNBAのマーキュリーのオーナーであるロバート・サーバーは、人種差別的な発言、また従業員への不適切な発言、行為があったとして、リーグから1年間の活動停止処分と1000万ドル(約14億円)の罰金を科された。この問題を機にサーバーはサンズとマーキュリーを売却することを選択。『ESPN』と『Forbes』は、マット・イシビアが40億ドル(約5200億円)でサンズ買収を決めたと報じている。
イシビアはミシガン州の住宅ローン会社、『UWM』(ユナイテッド・ホールセール・モーゲージ)の会長兼CEO。イシビアはその会社の71%の株式を、弟のジャスティンが22%を所有している。イシビアはもともとミシガン州立大のバスケットボール部でプレーしており、2000年にNCAAトーナメントで優勝している。プレータイム2.4分の控えガードだったが、彼はかつて『Forbes』の取材に、「チームで一番劣る選手としてベンチにいたということは、チームで一番努力するヤツだったということだ」と当時の自分を誇っている。
『UWM』は弁護士だった彼の父が副業で始めた住宅ローン会社で、イシビアが大学を卒業して勤め始めた2003年は従業員10数人の中小企業に過ぎなかった。転機は2007年から2008年に起きたアメリカの金融危機。住宅ローン会社でありながらサブプライムローンを取り扱っていなかった『UWM』はそのダメージを受けず、倒産した同業他社から有能な社員を招き、大混乱の住宅ローン市場で一気に成り上がった。
2013年にマットはCEOに就任。2021年1月に一部の株式を投資家に売却したことで、マットの総資産は100億ドルを超えたと言われている。ただ、その後に株式公開に打って出たが、新型コロナウイルスのパンデミックの中で株価は3分の2に暴落し、『Forbes』は現在のマットの総資産を47億ドルと推定している。イシビアであればサンズ買収の資金を出すことができる。バスケットボールへの情熱も、それを後押しするだろう。
直近のNBAチームの買収劇を振り返ると、2017年のロケッツが22億ドル、2019年のネッツが23億5000万ドル、2020年のジャズが17億ドル、2021年のティンバーウルブズが15億で、40億ドルは高すぎるように思える。サーバーが2004年にサンズを買収した時の価格は4億ドルだった。
それでも、NBAはマイケル・ジョーダンの時代から右肩上がりで成長を続け、その人気は近年のグローバル化によってさらに上がっている。NBA自体が大きな利益を生み出す中、それに伴い各クラブの市場価値も上がり続け、NBAチームのオーナーシップは『チームは30しかないのに買い手はいくらでもいる』という超売り手市場となっている。
サーバーとイシビアが経営権移管で合意しても、他チームのオーナーの承認も必要であり、売却が完了する正式な時期はまだ明らかになっていない。今のサンズは優勝を争う力がある。チームがバスケに集中するためにも、スムーズなオーナー交代が望まれる。