「エースとしてやらせてもらっていますが、一人よがりのチームじゃ勝てない」
今年のインカレも終盤に入り、12月9日は準々決勝が行われた。東海大と中央大の対戦は序盤から一進一退の攻防が続き、最後に一歩前に出た東海大が70-65で激闘を制している。両チームは昨年も準々決勝で激突し、この時は東海大が69-65で競り勝った。1年前のリベンジをなんとしても果たしたかった中央大だが、今年もあと一歩届かずに終わってしまった。
中央大の大黒柱である4年生の渡部琉は大学最後の試合をこのように振り返る。「昨年のリベンジの場として最高の舞台が整った中、本当にチームのみんなはよくやってくれたと思います。チームとしてやろうとしていることもかなりできましたが、大事なところで自分がミスをしてしまいました。最後のシュートも自分が打てなかったっていうところはまだまだという気持ちです」
渡部はスピードに乗ったドライブと精度の高いジャンプシュートを兼ね備えた世代屈指のスコアラーで、大学2年時には秋田ノーザンハピネッツ、3年時には広島ドラゴンフライズで特別指定選手としてプレーしている実力者だ。だからこそ、この試合でも徹底マークにあい、試合全体で放ったシュートは9本のみで10得点に留まっている。一方で渡部が守備の注意を引きつけてテンポ良くパスをさばいたからこそ、他の選手たちが思い切りよくシュートを打てた場面が何度もあった。「周りの選手が気持ちよく打てていたシーンもあって、それは良かったなと思います」とこの点については手応えを感じている。
ただ、チームにおいて渡部の得点力が傑出しているのは間違いない。だからこそ一発勝負のトーナメントにおいて、彼がタフショットになってもどんどんシュートを打ったとしても、それは勝つために妥当な選択と言えた。しかし、渡部はあくまでもチームとして戦うことを選んだ。「エースとしてやらせてもらっていますが、一人よがりのチームじゃ勝てないと思いました。自分が打てるシーンは必ず打つって決めて入りましたし、相手が寄ってきたらさばくことを意識していました」
「見ている人を楽しませる、感動を与えられる選手になりたい」
だからこそ、シュートの本数は少なかったが、「試合を通して自分のプレーはできていたと思います」と言い切る。絶対的なエースでありながら、この献身的な姿勢を貫くのは、次の思いをずっと胸に抱いてコートに立ち続けていたからだ。「今までエースとして他の人のチャンスを奪ってまで自分がやらせてもらっていました。チームメートには感謝しかないです」
今日を持って渡部の大学バスケットボール生活は幕を閉じたが、これは新たな舞台でのスタートを意味する。「感情のコントロールやコミュニケーションを取ることは、自分としてもかなり成長したと思います」と大学4年間で培ったものを語り、その上で引き続き得点を取ることへのこだわりは持ち続けていく。
「得点は4年間、中央大で鍛えさせてもらったところです。そこは上のステージに行っても必ずストロングポイントとして表現していきたいと思います」
そして自身の目指していく選手像を「難しいですね」と少し考えながらこう語る。「やっぱ日本代表になりたいです。そして見ている人を楽しませる、感動を与えられる選手になりたいなと思います」
彼の躍動感のあるプレーから繰り出される得点シーンは、これまで何度も会場を沸かせてきた。次のステージでも持ち前のアグレッシブなスタイルを継続することで、多くのバスケットボールファンを魅了する姿が今から楽しみだ。