キャリアハイを更新する4本の3ポイントシュートを決めてチームに勢い与える
12月3日、秋田ノーザンハピネッツはアウェーで千葉ジェッツと対戦した。第2クォーター序盤に最大18点をリードしていた秋田だったが、そこから千葉Jのアウトサイドシュートを最後まで止めることができず、78-89で逆転負けを喫した。
チームのリバウンドリーダーのケレム・カンターが不在の中、秋田は選手全員がリバウンドに対する意識を高く持ち、オフェンスリバウンドを11本奪いオフェンスの機会を増やすことで、前半をリードして終えることができた。また、リーグで2番目に多い平均20.5得点でチームを牽引するスタントン・キッドが第1クォーターに12得点を挙げ、トータル22得点でチームハイの得点を記録。ポイントガードの伊藤駿が第1クォーターと第4クォーターに2本ずつ3ポイントシュートを決めて、日本人選手トップの14得点をマークしたように、2人の活躍は目立っていた。
秋田の指揮を執ったケビン・ブラスウェルアシスタントコーチは、キッドと伊藤を次のように評価した。「伊藤選手は先週の信州(ブレイブウォリアーズ)戦と水曜日のアルバルク(東京)戦と今日の試合までの4試合でかなりアグレッシブにプレーしてくれました。シューターじゃないけどシュートはオープンになれば打って欲しいと伝えているので、結果を残してくれたのは良かったです。スタントン選手も良かったです。外国籍選手が2人になってから頑張ってくれています。後半にパフォーマンスが落ちてしまいましたが、明日は試合を通してパフォーマンスを上げてくれると思います」
指揮官が話すように積極的にシュートを狙う姿勢を見せ、キャリアハイとなる4本の3ポイントシュートを決めた伊藤は、「『打てるなら打て。打たないならベンチに下げる』とケビンに練習の時から言われるほどなので、リングに対する意識は変わったと思います。その意識が今日はいい方向に向いてくれました」と自身のシュートに手応えを感じている。
「葛藤がこれまであったんですけど、今日の試合でシュートの整理がつきました」
ポイントガードとして秋田のオフェンスをコントロールする伊藤は、ここまで3ポイントシュートのアテンプト数は決して多くなく、2019-20シーズンに秋田へ移籍して以降で最も多い試投数は27本(平均0.8本)と、自身の得点よりも仲間を生かすスタイルに徹していた。しかし、今日の試合はアテンプト数と成功数ともに秋田へ加入後最多の5本中4本成功と、先のコメントでもあった通り意識の変化とシュートタッチの改善が見られた。
「シーズン前のオフ期間中に、シュートフォームの見直しをしました。これ自体は毎シーズンやっていることなんですけど、今シーズンはあまり良くなかったんです。それで今週の水曜日の試合の後に元のフォームに戻したら、今日のように気持ち良く打てるようになりました」
シーズン中にシュートフォームを変えることは、成功率の向上に繋がる選手もいるが、失敗し確率を落とすリスクもはらんでいる。その中で伊藤は見事にシュートタッチを取り戻し、結果を残すことができた。「今シーズンは競った試合が多くて、どっちかと言うとこれまで通りコントロールに回っていた方が良いのかなと思っていました。シゲ(田口成浩)も調子が良いし、確率を考えたらそっち優先の方が良いっていう葛藤がこれまであったんですけど、今日の試合でシュートの整理がつきました。半信半疑で打っていたシュートがクリアになった感じで、自分の中でもリフレッシュできた感覚です」
コーチからリングに向かう積極性を求められ、シュートに対する迷いを断ち切った伊藤の活躍は、秋田の上位浮上に向けた追い風となるだろう。