シェイ・ギルジャス・アレキサンダー

抜群の個人能力とチームバスケは相性悪し、サンダーの解決策は?

開幕から20試合が経過し、平均30点を超える選手も絞られてきましたが、その中にシェイ・ギルジャス・アレキサンダーも残っています。今シーズンもサンダーのエースとして平均31.1得点、フィールドゴール成功率50.6%と活躍しています。スタッツだけ見ると5年目の24歳らしく順調に成長しているように見えますが、そのプレーは単なる『成長』という言葉に収めたくないほど強烈です。

これまでのシェイは平均20得点を超えても、個人能力での打開だけでなくプレーメークを覚え、アウトサイドからも効果的に点が取れれば、より楽に得点を奪う選手になれるという『成長の余地』を多く残していました。

現在の彼はその課題を残したまま、それよりも得意のインサイドアタックに磨きをかけ、分かっていても止められないドライブで得点能力を圧倒的なレベルまで上げてきました。身体能力任せのアタックではなく、緩急入り混じった巧みな1on1から、フェイダウェイやユーロステップなど変幻自在のフィニッシュに持っていきます。

成功率が90%を超えるフリースローを与えてはいけないにもかかわらず、相手ディフェンスはファールを重ねており、シェイの動きが予測できていないことを示しています。その上、彼は疲れることを知らない豊富な運動量の持ち主で、マイボールになった瞬間にスピードアップし、速攻での得点も大きく伸ばしてきました。シェイが自らアタックに行くことはディフェンスも分かっていますが、それでも対処法が見つからず、手が付けられない状態になっています。

今シーズンのサンダーはドラフト2位のチェット・ホルムグレンがシーズン全休となりましたが、3年目のアレクセイ・ポクシェフスキーが予想外の成長を見せ、さらにルーキーのジェイレン・ウィリアムスが早くも結果を残すなど、若い選手が全員でステップアップをしています。しかし、シェイのプレーが圧倒的すぎて、チームプレーよりもエースの個人技の方が効果的になってしまい、成長と勝利のバランスを取るのが難しくなっています。

特に2年目のジョシュ・ギディーはシェイの存在感が強すぎることで割を食っているようです。ディフェンスを引き出すのが上手く、見事なアシストパスを出していくギディーですが、ビッグマン不足のサンダーではドライブに対してゴール下で合わせてくれるチームメートがいないケースが多く、それはチーム戦術として改善すべきポイントなのですが、同じ状況でもシェイだと多彩なフィニッシュを駆使して自分で得点できます。

ギディーにはチームメートの連動を必要としますが、シェイはスペースがあれば十分であり、逆にチームメートがアタックの邪魔をしないことが第一なので、この2人の違いにチームメートが対応しきれていない印象です。そのため、シェイとギディーが同時に出ている21分間で得失点差がマイナス5.0なのに対して、シェイのみがコートにいる14分間ではプラス5.6と明確な差が出ています。エースにすべて任せてしまえば点が取れる状況は、チームとしての戦い方を難しくもしています。

誰もがハードワークを欠かさず、攻守に個々の戦いを制することを重視したサンダーは、本来はエースの個人能力に頼るチームではありません。それにもかかわらず、エースのシェイがあまりにも突出しているがために、チームプレーそのものをが変わってしまっています。

ただ、チームメートに合わせることでシェイの才能を削ぐようなことがあっては本末転倒です。突き進むエースに負けないペースでチームメートが成長していけるか。それが実現すれば、サンダーは一気に変わる気配があります。