安藤香織

大阪薫英女学院は昨年のウインターカップで主力を務めた都野七海と熊谷のどかが3年生となり、昨年から継続してのチーム作りの成果が出て、今夏のインターハイでは準優勝の好成績を収めている。35回目の出場となる今回のウインターカップでは初優勝を狙いたいところだが、安藤香織ヘッドコーチは慎重だ。大舞台に臨む前に、主力である3年生が課題を乗り越え、一つ大きく成長することが大事だと語る。

「大学生が見せるキャプテンのあるべき姿を高校生が肌で感じたり」

──今年は日清食品トップリーグが始まり、いつもと違うスケジュールとなりました。安藤コーチも例年より慌ただしかったのではありませんか。

まず、今年の1月から大阪人間科学大学も見ているんです。去年のインカレが終わって監督が辞められて、後任が見付かるまではと、平日は学生に練習を任せて土日に私が見ていたんですが、全関西で大阪体育大学にボロ負けしたのを機に「私が責任を持って大学生も見ます!」と、5月から。それまでは別々だった練習を高校生と一緒にやって、西日本大会では7年ぶりに優勝しました。

インターハイが終わった後は国体で、その後はトップリーグが始まったので、大学生のリーグ戦は行けない試合や、当日いきなり行く試合もありました。高校はトップリーグで岐阜女子に負け、大学もリーグで立命館に負けたところで一回立て直して。今はウインターカップとインカレに向けてそれぞれ調整しています。授業の関係で別になることもありますが、高校生と大学生で一緒に練習することが多いです。

──予想外な形で大学も指導するのは大変だと思いますが、良いサプライズはありましたか?

ウインターカップで準優勝した時の北川聖や清水咲来が大阪人間科学大学にいて、薫英出身の選手は私のバスケの原理原則は理解できるし、薫英以外の子も「すごく分かりやすい」とすぐにのめり込んでくれました。ただ、私の指導も根本は一緒でも3年間でだいぶ変わっているので、大学生が高校生に分からないことを聞いたりしています。それでも大学生の方が吸収は早いですし、大学生が見せるキャプテンのあるべき姿を高校生が肌で感じたり。お互いに応援しながら、すごく良い感じで練習ができています。

私自身、今までは大学のチームを横で見ながら応援していたわけで、高校から行った選手が悩んでいる姿も見ながら「応援してるから頑張って」としか言えない状況でした。2チーム分のことを考えるのは大変ですし、絶対ケガさせられないからしんどいですけど、西日本で結果が出て、選手たちは大学で初めてメインコートに立てて涙、涙ですよね。大学生は人数も少ないのですが、その人数ですごく盛り上げて、高校とは違う楽しさを感じています。

安藤香織

「高校生なのにプレーが上手いからOK、という考えはダメ」

──思いがけず大学の話が長くなりましたが、高校のチームはここまでいかがですか?

ウチはインターハイが終わると新チームでスタートします。そうしないと高校生は間に合わないので。今年は都野と熊谷をキャプテンにしているんですけど、去年の3年生がすごくフォローしてくれていたので、良いキャプテンになるかと思ったら全然ダメで。都野はプレーは素晴らしいんだけど直感でやるタイプだし、キャプテンとして気配りができるわけでもない。熊谷はもう少し考えるのですが、それでもやっぱり安定しない。今もすごく苦しんでいます。

桜花学園はオリンピックに出るようなすごく才能のある選手が多いし、岐阜女子は留学生を軸としながらもディフェンスのシステムがちゃんとしています。京都精華学園は中学校から育成していて、今年は留学生のスーパースターもいます。それに対して薫英が何で戦うのか、私は「高校生として日本一」と言っています。私自身が公立で薫英を倒そうとしてきたコーチで、薫英でも学校生活とか人間性を大事にしたいと思っています。それなのに3年生が「寝坊しました」とか「授業中にやる気がなさそうでした」という本当しょうもない問題があって。

逆に2年生ができすぎちゃうんです。今の3年生が1年だった時は私が担任だったんですけど、今の2年生は1年、2年と担任をしていて、担任だとコーチとは違う顔で、クラスで遠足に行ったり体育祭で優勝したりとか楽しいわけですよね。それで2年生が、もともと努力ができる上にすごくポジティブで、リーダーシップを取れる子もいる。そういう面では3年生が2年生に押されてる状態なんです。

──インターハイ準優勝は3年生の力が大きいと思いますが、メンタル面でもう一つ殻を打ち破ってほしいですね。

都野と熊谷は絶対的な実力を持っていて、2人がプレーで引っ張ってくれてインターハイ準優勝まで行きました。都野はゲームになるとフレキシブルに点を取れる選手で、「そういうキャプテンで良いのかもしれない」と思いましたが、高校生なのに最初からプレーが上手いからOK、という考えはダメですよね。本人たちも分かってはいるのですが、今もメンタルの部分で成長しきれず苦しんでいますが、結局は自分が強くなるしかないので、なんとかここを乗り越えてもらいたいです。

安藤香織

「最後までもがいてあがいて、ウインターカップへ」

──新しい大会、トップリーグを戦ってみた印象はいかがですか?

素晴らしい環境なので、選手にとっては良い経験です。疲労もあるかもしれませんが、高校生のチームはゲームをやればやるだけ課題が見えて、成長に繋がります。コロナの時は試合ができなかったことを思うと、あの環境でできるのは本当に素晴らしいです。正直、ウチは人数も少ないですし、やればやるほど苦しい部分が出てしまうのですが、それをこの年代の選手たちが経験できることには感謝しかありません。

──ウインターカップではどんな戦いがしたいですか?

今のウチのバスケの限界を超えたいですね。高さやシュート力を足していって100点という考え方では限界があるから、そうじゃなくて120点、130点を目指すバスケをしたいです。そのためには相手の得意な部分を倒す秘策だったり、自分たちの狙われる弱点に仕掛けを持つことが大事です。自分たちの見たことのない進化をしたいです。

ただ、その前にまず3年生です。今の3年生はバスケの結果は誰もが認めるところだし、それに対する努力もよくやっています。本人たちは「感謝を返したい」と言うんですけど、それは試合に勝つことだけじゃなく、試合に出れない選手の気持ちを考えることだったり、そういう部分の成長をした上で、ウインターカップでチャレンジしてほしい。仮に初戦で負けてもチャレンジすることが大事だと思っています。

──インターハイでは準優勝でした。ウインターカップではもう1つ勝ちたいですね。

インターハイのことはもう覚えていないですね(笑)。インターハイで準優勝したからと言って日本で2番目に強いチームなのかと言えば、全然そんなことはありません。トップリーグでも自分たちの力のなさを感じているし、いまだ課題ばっかりです。京都精華学園と桜花学園だけを見ればいいチーム状態ではないので、そういう意味で驕りはないと思います。

それでも、まだ成長できる機会はあるので、最後までもがいてあがいて。「薫英のバスケを楽しみにしてください」と言えるレベルまで持っていって、ウインターカップを迎えたいです。応援よろしくお願いします。