ラウリ・マルカネン

「精力的に、そして積極的であろうとしている」

ラウリ・マルカネンのトレードが決まった時、キャバリアーズのファンの中に多少の寂しさを持つ者はいても、嘆き悲しむまではいかなかっただろう。ブルズからキャブズに加入して、チームのプレーオフ進出に貢献したものの、主役は彼ではなかった。ドノバン・ミッチェルとのトレードであれば、キャブズにとってはプラスが大きい。こうしてマルカネンは、再建チームのジャズへとやって来た。

ところが、ジャズはここまで12勝8敗と大健闘を見せ、マルカネンは得点とリバウンドでチームトップと大活躍している。22.0得点はキャリアハイの数字で、11月8日のサンズ戦ではこちらもキャリアハイの38得点を記録。好調は長続きしないとの見方もあったが、開幕から1カ月を過ぎても高値安定のパフォーマンスは続いている。開幕当初は3ポイントシュートが入らなかったが、11月に入ってからは40%超えで決めており、むしろ得点のパターンが増えて調子を上げていると言っていい。

8.5リバウンドはブルズ所属時代、NBAキャリア2年目の9.0に次ぐ数字。しかし、インサイドプレーヤーだった当時と違い、スモールフォワードとしてプレーする今の彼にしては十分すぎるスタッツだ。しかもオフェンスリバウンドは2.4と、過去のキャリアから倍増している。さらにアシストもキャリアハイの2.4を記録で、今までの最高が1.4だったことを考えれば大幅な伸びを示している。

ジャズを率いるウィル・ハーディーは「ラウリは夏のユーロバスケットの好調をこのチームに持ち込んで、良いスタートを切った」と語る。「彼は才能あるプレーヤーだが、これまでのキャリアで見せた以上に、攻守両面で多彩なプレーを見せている。スタッツには出ないが、ガードを守れてニコラ・ヨキッチを相手に守ることまでこなす万能ぶりは素晴らしいものだ」

ハーディーがジャズでやろうとしているパス主体のスタイルがマルカネンに合っているのも事実だ。マルカネンの持ち味は多彩さであり、一つの役割に固定されるのではなく、プレーの流れの中でそれぞれが役割を変える中で持ち味が出ている。

彼自身も「このチームは僕に合っている」と言う。「チームメートが僕をオープンにして、パスをくれる。良いシュートチャンスをみんなが作ってくれているんだ。僕はオフェンスでもディフェンスでも、精力的に、そして積極的であろうとしている」

マルカネンはキャリア6年目にして初めてエースの座に就いた。「相手が研究してくるだろうから、それに対処しなきゃならない。逆に相手のディフェンスを見て、逆を突くプレーをするつもりだ。スタートは良かったけど、まだ学び続け、もっと良くなれると思っている。ボールのないところでどう動くかが大事だけど、もっと経験を積むことでディフェンスの動きを見て、いつカットし、いつスリップするかを工夫できる」

もっとも、NBAでは『中途半端』は好まれない。再建チームの躍進は素晴らしいサプライズだが、フロントが考えるプランに沿っているとは限らない。そうなればいずれ路線変更を強いられる。

マルカネンの活躍が続くにつれ、トレードの噂が出るようになってきた。ジャズはマルカネンを手放さない姿勢だが、これからジャズが拒めないようなオファーが出てくる可能性はある。それはマルカネンにとってもステップアップのチャンスだ。もしトレードとなった場合、ジャズにいた期間は短くとも、今まで以上に別れを惜しまれるのは間違いない。