指揮官パトリック「広島はとてもフィジカルでうちは受け身になってしまいました」

千葉ジェッツは11月19日、リーグ再開後の初戦で西地区首位の広島ドラゴンフライズに77-92で敗れた。4連勝と良い形で中断期間に入っていた千葉Jだが、この試合ではワールドカップ2023予選Window5に日本代表として出場し、前日にチームに合流したばかりの富樫勇樹をベンチスタートにした影響もあったのか、序盤から広島の激しいプレッシャーにリズムを崩してオフェンスが機能しなかった。その結果、第1クォーターでわずか5点と大きく出遅れ、第2クォーターこそ28点と持ち直したが、第3クォーターに再びオフェンスが停滞し、タフショットを打たされ相手にトランジションで走られる展開を許す完敗だった。

千葉Jの指揮官、ジョン・パトリックは「広島は最初から積極的にディフェンスをやってきて、とてもフィジカルでした。うちは受け身になってしまいました」と、相手の圧力に屈した点を敗因に挙げた。

攻守ともポシティブな材料は少なかった千葉Jだが、その中で存在感を発揮したのは荒尾岳と西村文男の両ベテランだった。この試合でB1個人通算1000得点と500アシストを達成した西村は、巧みなパスさばきとポジション取りでスペースを作り出し、オフェンスの流動性を高めていた。そして荒尾も6分46秒と限られた時間の中、速攻に走ってリバースレイアップを沈め、守備でもブロックに加え、スピードのミスマッチとなる寺嶋良との1対1になった場面でボールを弾き、あと一歩でスティールという見せ場を作るなどエナジー満点のプレーで会場を沸かせた。

この2人のプレーについてはパトリックも評価している。「プラスマイナスで文男と岳はマイナスではない。(ケリー)ブラックシアー・ジュニアが2つ難しいシュートを決めましたが、岳は非常に良いディフェンスをやってくれました。2人はベテランのリーダーシップをプレシーズンから見事に発揮してくれています」

「うまくチームが同じ方向を向いて進めるようにできればいい」

しっかりとインパクトを残した荒尾は、「試合の入りで相手がフィジカルに戦ってきたところで、リバウンドを取られこちらがミスをして主導権を握られてしまいました。そのまま流れを持ってくることができずに試合が終わってしまった印象です」と試合を総括し、自身のプレーについてこう続ける。

「少し点差が開いてうちにエナジーが足りない状況での出番でした。ディフェンス面の激しさに加え、もう少し賢くできた部分はあったので、そこを修正していきたいと思います」

千葉Jはリーグ屈指の帰化選手であるギャビン・エドワーズを擁しており、日本人ビッグマンが出場機会を得るのは特に厳しい状況となっている。その中でも荒尾は自身の果たすべき役割を次のように考えている。

「プレー面だとコーチは細かいことが多いので、そこをしっかり表現できるような存在になっていきたいです。プレー以外の面では、積極的にアドバイスをするタイプではないですけど、若い選手の話を聞いたりしてうまくチームが同じ方向を向いて進めるようにできればいいと思います。コーチとはオフコートキャプテンになってくれと言われた時、そういう話をしています」

また、一選手として「もちろん試合に出て活躍したい気持ちはあります」と虎視淡々と出場機会を狙っているが、同時に2017-18シーズン以来となる復帰の機会を与えてくれた千葉Jにコート内外を問わず貢献していきたい思いがある。

「どんな形でもいいのでまずはチームであり、千葉ジェッツという大きな組織に貢献します。すごく感謝の気持ちがあるのでそれを伝えていきたい。勝つことだったり、懸命にプレーする姿で勇気や元気をブースターの皆さんに感じていただきたいです」

千葉Jの大きなアドバンテージの一つはクリストファー・スミスやヴィック・ローを3番ポジションで使うビッグラインナップを敷くことができる点にある。エドワーズの負担を増やすことなく、この武器をより活用するためにも、荒尾の存在は数字に出ない部分でも重要となってくる。