文=大島和人 写真=B.LEAGUE

シューター陣の『切り込むプレー』で活路を見いだす

仙台89ERS(東地区4位)は8連敗中、琉球ゴールデンキングス(西地区5位)も4連敗中と、お互いが苦しい状況で迎えた今季初の交流戦だった。

また今節は東北楽天イーグルスとの共同企画『TOHOKU SMILE デー』として開催され、選手がイーグルスと同じクリムゾンレッドのユニフォームを着用するという試みもされていた。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は仙台が[1-2-1-2]で、琉球が[2-1-1-2]。第1クォーターは『2』の琉球がボールを動かす強みは出しつつ、取り切れずに22-18の小差で終える。

第2クォーターは仙台が優勢だった。仙台は208cm122kgのチリジ・ネパウエがインサイドで強さを見せ、ウェンデル・ホワイトともにゴール下を支配する。ネパウエの10分間で12点を挙げる活躍もあり、琉球は41-43と逆転を許してハーフタイムを迎えた。

しかし後半は琉球が思い通りに試合をコントロールした。伊佐勉ヘッドコーチはこう振り返る。

「前半は外、ワイドオープンから打てていましたけれど、たぶん仙台さんがそういう風に仕向けていたのかなと。(ハーフタイムに)まず相手のペイント内に一回侵入しようと言って、それをしっかり選手たちがやってくれた。(後半は)インサイド、アウトサイドとバランスよくスコアできた」

ガードの岸本隆一はこう説明する。「前半からペイントにはアタックできていた。(インサイドの外国人選手だけでなく)僕ら日本人選手がペイントにアタックしていくことでもっともっと点数が加算されていくと思った。第3クォーターの頭から積極的に行きました」

琉球は日本人のシューター陣が、第3クォーターに入ってドライブで切れ込むプレーを増やした。それが奏功して岸本は第3クォーターの10分間で2ポイントを2本、フリースロー5本を含む計12ポイントを挙げた。外角のシュートを持ち味にする喜多川修平も、やはりフリースローを4本得て4本決めている。

第4クォーター、テリーが本領発揮で試合を決定づける

琉球は何より走力で上回った。琉球の速いトランジション(切り替え)に仙台はついていけず、琉球は10分間で大量31点。琉球が72-62と再びリードを得ただけでなく、仙台を壊して試合を決めた第3クォーターだった。

仙台の佐藤文哉はこう反省する。「前半はパスが回っていたし、ネパウエにポストを当ててインサイドで攻められていた。しかし後半になって徐々に点数が離されてきたとき、それぞれの個人プレーになってしまったという印象がある」

琉球は第4クォーターに入ってもオフェンスが猛威を維持する。特にレイショーン・テリーはこのクォーターだけで15得点5リバウンドを記録する大爆発だった。加入直後とあってまだ長いプレー時間は得ていない彼だが、相手のディフェンスがルーズになった中で、元NBAの個人能力を存分に見せた。

「フィットさせ切れていない部分がありますけれど、第4クォーターで証明した通り、スコア能力、ディフェンス能力、リバウンド能力にはすごいものがある。彼がもっとフィットすることで、必ずチームも良くなると信じている」という伊佐ヘッドコーチの言葉の通り、テリーが今後への可能性を感じるプレーを見せた。

第4クォーター残り2分1秒には、プロ契約を結んだばかりの専修大4年生、渡辺竜之佑もコートに登場した。特別指定選手として11月5日の大阪エヴェッサ戦でもプレータイムを得ているが、それ以来のBリーグだった。

「みんなに準備しとけと言われていて、出たら絶対リバウンドをもぎ取ってやろうと思っていた」という渡辺だが、残り1分5秒でまず初リバウンドを記録。そこから放った3ポイントシュートがエアボールになるなど、ボールが手に付かない感じもあった。しかし無事に残り0分54秒、琉球のこの試合100点目となるジャンプショットを決め、プロ初ポイントも決めている。

2分間のプレーで2得点2リバウンド1アシストというスタッツを残した渡辺は「覚えていないくらい緊張しました。リバウンドを取って誰もいなかったので『じゃあスリーを狙おう』って打ったのは覚えているんですけれど、そこから覚えてないです」と試合を振り返る。

「前半は飲み込まれかけましたけれど、後半しっかり自分たちのバスケットを見失わずにやった結果が勝ちにつながったと思っています」(伊佐ヘッドコーチ)

琉球は後半に63点を挙げて、最終的には得点を『104』まで積み上げた。ゲームコントロールが成功し、走力で上回り、第4クォーターには新しい力も台頭した琉球が、仙台に快勝している。