ラッセル・ウェストブルック

レブロン「負けた後に興奮して我を忘れるようでは……」

レイカーズvsトレイルブレイザーズのラスト30秒を切ったところ、ラッセル・ウェストブルックはボールプッシュから迷わずジャンプシュートを放った。彼のシュートは警戒されておらず、打てるタイミングだと判断したのだろうが、シュートが弧を描いているうちからレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスは手の平を上に向けて困惑の気持ちを示し、コートサイドのファンは頭を抱えた。

1点リードの場面で時計を進めずすぐシュートを打つ理由は何なのか。得点期待値が最も高いプレーはドライブでファウルを誘うことであり、あの場所でのプルアップという選択は理解しがたい。シュートがリングの根元を叩くと会場はザワつき、まだリードしているにもかかわらず『もうダメだ』という空気が流れた。そして実際、レイカーズは104-106で逆転負けを喫した。開幕3試合、いまだ勝ち星はない。

試合後、コート上の重苦しい空気は会見場でも同じで、ロッカールームの雰囲気を聞かれたレブロンは「クソだね」と答えている。それでも、ウェストブルックのプレーについては「批判するつもりはない」と一言。レイカーズの3連敗にメディアは大騒ぎだが、レブロンがチームメートを批判すれば騒ぎは一層大きくなる。その手には乗らないよ、といった表情で「負けた後に興奮して我を忘れるようでは、バスケットボールのビジネスにかかわるべきじゃない」と続けている。

この試合の第4クォーター残り5分を過ぎて、ベンチで一息入れたウェストブルックがコートに戻ると、ブレイザーズはビッグマンのフスフ・ヌルキッチをマークに付けた。ゴール下へのドライブは許さないが、ジャンプシュートは好きなように打たせる構えだ。今後はどのチームもレイカーズに対してこのような対策を取るだろう。

ウェストブルックは、どうプレーすべきだったと思うかと問われて「分からないけど、とにかく自分にできるベストを尽くすまでだ」と答えている。ウェストブルックがシュートを決めてレイカーズを勝たせる日が来るかもしれない。ただ、シュートが決まるかどうかは『神のみぞ知る』だが、シュートセレクションの悪さが改善できないようでは、行く末が明るいようには思えない。

もちろん、レイカーズ低迷の責任すべてがウェストブルックにあるわけではない。誰かが責任を取らなければならないのだとすれば、デマー・デローザンを始め多数いた他の候補者ではなくウェストブルックの獲得を決めたロブ・ペリンカGMであり、今夏そのペリンカの手腕に契約延長で報いたオーナーのジーニー・バスだ。ウェストブルックが『ミスター・トリプル・ダブル』と呼ばれた頃の彼であっても、あるいは開幕前に取引可能な誰とトレードされていたとしても、レイカーズは『そこそこ戦える』程度のレベルにでしかなかったはずだ。

「負けた後に興奮して我を忘れるようでは、バスケットボールのビジネスにかかわるべきじゃない」とレブロンは言ったが、それは何の手も打たずに静観する、という意味ではない。感情論ではなく冷静な判断で今のチームを取り巻く要素を考察すれば、結局のところ出てくる決断はウェストブルックのトレードではないか。

市場価値が暴落した今のウェストブルックをトレードしようとしても、レイカーズの望むような条件は引き出せない。だがそれは彼ら自身がウェストブルックの価値を毀損したのだから当然であり、それを受け入れた上でチームを前進させる手を打つのがプロフェッショナルの責務だ。レイカーズにそれができるか、今の状況を見る限りは悲観的にならざるを得ない。開幕からわずか1週間、チームは危機的状況にある。