速攻とは相手がディフェンスを組み立てる前に、8秒以内に獲得した得点
この記事を開いてくれたすべての皆様、数字の沼へようこそ。今回から始まるこの不定期連載では、自称『日本一スタッツを取る素人』である私しんたろうが、公式サイトのボックススコア(ベーシックスタッツ)から一歩踏み込んだ、『アドバンスドスタッツ』を紹介、解説していきたいと思う。
第2回は速い展開を得意とするチームを意味するスタッツ(の一つ)「FBP(Fast Break Points)」をご紹介しよう。まずは速攻の定義をおさらい。『FIBA STATISTICIANS’ MANUAL 2018』 によると、「相手チームがハーフコートディフェンスを組み立てる前に素早く(8秒以内)獲得した得点(フリースローを含む)。速攻によるレイアップを外した後のオフェンスリバウンドからの得点であっても相手チームがディフェンスを組み立てる前であれば速攻に含まれる」と明記されており、意外にも厳しい基準であることがわかる。
つまり、どんなに相手がディフェンスを組めていなかったとしても1秒超過していたら速攻に含まれず、アーリーオフェンス(相手の守備体勢が整う前に仕掛ける攻撃)での得点となるため、このスタッツには反映されていない点は注意が必要だ。さらにこのスタッツを見る上で注目すべきポイントが3つ存在する。
ポイント1:攻撃回数や延長戦の有無によって多く見えるチームが存在
たとえば、ハイペースなチームと対戦した場合、そのチームの攻撃回数も増えるためFBPも引き上げられることがある。そのためFBPのみでの判断には注意が必要だ
ポイント2:速攻が多いチームはわかるが『主体』のチームかどうかはわからない
速攻が最も発生しやすいシチュエーションはターンオーバー後である。そのため、ターンオーバーを多く奪っており必然的に速攻が増えているチームなのか、ディフェンスリバウンドなどから意図的に速く展開しているチームなのかは他のスタッツを見て判断しなければならない
ポイント3:やむを得ず速攻で得点を取っているチームの存在
ハーフコートでのオフェンスが振るわず、速攻の得点が増えている場合がある。例えば10月23日に千葉ジェッツと対戦した滋賀レイクスは、FBP22得点を獲得しており速攻を得意とするチームであるように映るが、2ポイントシュート成功率が34%、3ポイントシュート成功率が24%、総得点が58点であったため、速攻に活路を見いだしたと言える。こういった現象が発生するため、他の数値と比較することが大切である。
前置きが長くなったが、第4節終了時点のFBPランキングと合わせて、私が独自に計算しているFBP%(総得点に対する速攻による得点割合)ランキングをご紹介しよう。ちなみに、このFBPは公式サイトの日程・結果から、試合レポートを開くことで閲覧が可能だ。
順位 | 平均FBP | FBP% | ||
1位 | 名古屋D | 20.5 | 名古屋D | 21.71% |
2位 | 北海道 | 17.1 | 北海道 | 20.29% |
3位 | 群馬 | 16.3 | FE名古屋 | 20.24% |
4位 | FE名古屋 | 15.3 | 群馬 | 18.91% |
5位 | 三遠 | 14.5 | 秋田 | 18.78% |
6位 | 横浜BC | 14.3 | 横浜BC | 18.57% |
7位 | 茨城 | 13.4 | 三河 | 17.63% |
8位 | 三河 | 13.3 | 三遠 | 16.97% |
9位 | 島根 | 12.5 | 茨城 | 16.08% |
10位 | 川崎 | 12.4 | 川崎 | 15.80% |
11位 | 秋田 | 12.3 | 島根 | 14.97% |
12位 | 千葉J | 11.1 | 新潟 | 14.88% |
13位 | 新潟 | 10.8 | 滋賀 | 13.93% |
14位 | SR渋谷 | 10.8 | 京都 | 13.71% |
15位 | 滋賀 | 10.6 | 千葉J | 13.17% |
16位 | 京都 | 10.6 | 大阪 | 13.10% |
17位 | 広島 | 10.0 | 広島 | 12.51% |
18位 | 琉球 | 9.8 | SR渋谷 | 12.28% |
19位 | 大阪 | 9.6 | 琉球 | 11.56% |
20位 | 富山 | 8.4 | 仙台 | 11.25% |
21位 | 仙台 | 8.4 | 富山 | 10.34% |
22位 | 信州 | 6.3 | 信州 | 8.56% |
23位 | 宇都宮 | 5.6 | 宇都宮 | 8.42% |
24位 | A東京 | 4.9 | A東京 | 6.41% |
平均 | 11.58 | 平均 | 14.59% |
このようにFBPとFBP%のランキングが必ずしも一致していないことがわかる。注目は秋田ノーザンハピネッツとレバンガ北海道。果たしてこの2チームが速攻を得意とするチームであるのか、それを考えてみるのも面白いだろう。