カワイ・レナード

『特別待遇』を求めすぎることで、チームは結束力を欠くことに

カワイ・レナードが万全のコンディションで開幕を迎えることで、クリッパーズは優勝候補に推されている。カワイが全休となった昨シーズンに他の選手が成長し、選手層が厚くなった。ここにカワイとポール・ジョージの揃い踏みが実現するのだから、机上の計算では優勝候補となる。

だが、本当にクリッパーズは優勝できるチームなのだろうか? クリッパーズは、そしてエースのカワイは、優勝に必要な要素を欠いているように見える。

ラプターズからカワイが、サンダーからジョージが加入したのは2019-20シーズン。この年にカンファレンスセミファイナルまで進んだが、ナゲッツを相手に3勝1敗から3連敗する大逆転敗退を喫した。

この時のナゲッツの勢いはすさまじかったが、クリッパーズは内部分裂していた。原因は他ならぬカワイとジョージだ。新型コロナウイルスの感染拡大によりオーランドの隔離エリア『バブル』で行われたこのシーズン、クリッパーズは2人のエースに過度な特別待遇を与えたとされる。

もともと、同じロスターの一員であっても選手の扱いには差がある。『バブル』での宿舎はディズニーリゾートのホテルだったが、レイカーズではレブロン・ジェームズがスイートルームを与えられた一方で、実績のない選手は一般の客室をあてがわれていた。クリッパーズがカワイとジョージに与えた待遇も同じようなものだが、彼らは専属のトレーナーを帯同させ、チームの練習スケジュールに口を出し、試合に出場するかどうかを自分で決める権限を持っていた。2人はコンディションを保つために交互に休養を取り、72試合のレギュラーシーズンで2人一緒に出場したのは37試合だけだった。

さらにカワイはクリッパーズ加入時点で、ホームアリーナから2時間離れたサンディエゴに住むことを許可されていた。これではチームへのコミットが弱いのも当然だ。

問題は、クリッパーズの他の選手が納得していなかったことだ。『バブル』のシーズンを最後にクリッパーズを退団したジャマイカル・グリーンは「ハートのないチームだった」と後にコメントしている。『The Athletic』は「カワイは特別扱いを求めすぎる」というチーム内部の関係者のコメントを紹介している。

NBAのスター選手には、その実力と実績に見合った待遇を受ける権利がある。レブロンがスイートルームに滞在しても、誰も嫉妬はしない。だが、それは実力と実績だけでなく、NBA優勝を勝ち取るためにすべてを投げ出す覚悟があると周囲が理解しているからだ。一方でカワイとジョージは、目の前の試合に勝つためにベストを尽くすだろうか?。

今シーズン、バック・トゥ・バック(2日連続の試合)は15回組まれている。ここへの出場はケガのリスクなので避けたいだろうが、そこには別のリスクもあることをカワイは理解すべきだ。

カワイの場合、スパーズには彼が関与しなくても鉄の結束力があった。ラプターズでもカイル・ラウリーが中心となったリーダーシップがあり、カワイは1年だけの在籍を『助っ人』としてプレーに集中していれば良かった。しかし、クリッパーズで求められるのは真のリーダーとしての立ち居振る舞いだ。

万全のコンディションを取り戻した以上、良いパフォーマンスを見せるのは当然のこと。今シーズンの彼にはリーダーとしての責任を果たすことが求められる。それが実現して初めて、クリッパーズは優勝候補になる。