エリック・パスカル

「自分らしくプレーして、全力で戦う」

エリック・パスカルは2019年のNBAドラフトで全体41位指名でウォリアーズに加入した。王者ウォリアーズで下位指名の彼が活躍するのは簡単ではなかったはずだが、ケガ人続出の状況でチャンスを与えられてルーキーイヤーから60試合に出場、27.6分のプレータイムを得て14.0得点の活躍を見せた。翌シーズンも40試合に出場、17.4分のプレータイムで9.5得点を記録している。

下位指名の選手としては予想外の結果を残したが、NBAは甘くない。ジャズでプレーした昨シーズンはローテーションには入ったものの存在感は薄れ、契約を失った。

7月末にティンバーウルブズへの加入が決まるのだが、それまでに彼はバスケットボールを辞めるつもりでいたと言う。引く手あまたのフリーエージェントならいいが、自分の将来が全く保証されていない状況は気持ちを削る。パスカルは気落ちしてしまい、トレーニングを続ける気力を失いそうになっていた。

「地獄のような日々だったよ。他の選手が契約を勝ち取ったというニュースを見るたびに、自分と比べていた。自分は認められていないと感じ、バスケとは違う道に行こうと思っていた」と彼は振り返る。

結局、彼がモチベーションを失いそうになりながらも練習を続けたのは「バスケの他に何をすればいいのか分からなかった」からだ。そしてもう一つ、親友のドノバン・ミッチェルの支えもあった。ジャズでチームメートになる前から、同じ1996年生まれでニューヨークで生まれ育った2人は仲が良かった。気落ちするパスカルは、毎日のようにミッチェルから電話で励まされ、トレーニングを続けたという。

ティンバーウルブズが提示したのは2ウェイ契約で、年俸も過去3シーズンより安い。それでも彼は躊躇なくこれに飛びついた。ウルブズの入団会見でパスカルは「大変だったけど、良い場所に来ることができた。幸せだ」と笑顔を見せた。

ジャズからウルブズに移籍した新戦力といえばルディ・ゴベアだが、パスカルも同じ。ウォリアーズのルーキーだった時と同じく、注目はされなくても、何をすべきかは分かっている。「自分らしくプレーして、全力で戦う。僕が持つ身体的な強さとガッツを発揮し、正しいプレーをする。僕はどのチームでもそうやってプレーする。チャンスを与えてもらってうれしいよ」

NBAで生き抜くのは、かくも難しい。だが、今のパスカルに迷いはない。ウォリアーズでそうだったように、思いがけないタイミングで現れてチームに貢献する存在になるかもしれない。