ドレイモンド・グリーン

ステフ・カリー「最高のバスケをやっていこうとする姿勢に変わりはない」

『The Athletic』は10月5日、ウォリアーズの練習中にドレイモンド・グリーンとジョーダン・プールが口論から揉み合いとなり、止めに入ったチームメートから引き離される際に、グリーンがプールを殴ったと報じた。グリーンはロッカールームで、チームの期待を裏切る振る舞いだったと謝罪したという。

翌日、グリーンはクラブ関係者にあらためて謝罪し、練習には参加せずに引き上げた。プールは殴られたもののケガはなく、通常通り練習を行ったという。ボブ・マイヤーズGMはこの件について「NBAはプロスポーツだ。誰も望まないし、我々は容認しないが、こういうことは起こる」とコメントした。

グリーンもプールも契約更新の時期を迎えている。32歳のグリーンは来シーズンがプレーヤーオプションの契約最終年で、キャリア最後の大型契約を結べるかどうかの時期。23歳で4年目のシーズンを迎えようとしているプールは、来シーズンがルーキー契約の最終年で、こちらも大型契約を手にしたいところ。ウォリアーズはすでにサラリーキャップを超過しており、どちらにも大盤振る舞いとはいかないだけに、2人に意識するところはあるだろう。

ステフィン・カリーとクレイ・トンプソンの『スプラッシュブラザーズ』の得点力、そしてグリーンのディフェンスとバスケIQがウォリアーズの王朝を支えてきたのは間違いない。しかしステフが34歳、クレイとグリーンが32歳となった今、新たな『チームの顔』の有力候補であるプールは大型契約を手にすることになるだろう。32歳のグリーンは選手寿命の伸びた今のNBAで『年寄りすぎる』わけではないが、ステフのように無条件でマックス額とはいかない。ウォリアーズとしては彼へのオファーは全体的なバランスを考慮して出さざるを得ず、その状況はグリーンにとって心地良いものではないはずだ。

ただ、この件が各メディアで大きく報じられるのは、無敵のウォリアーズにようやく隙が見えたからであり、練習中に選手が衝突するのは珍しいことではない。当然、クラブ側は火消しに入る。マイヤーズGMは前述のコメントに加えて、ケンカの理由は契約問題が理由だとは思わず、グリーンの処分は内部で済ませると語り、こう続けた。

「ドレイモンドのしたことは愛せないが、その人物を愛している。少々複雑だが、良いヤツなんだ。我々はこれを乗り越えて前に進む。トラブルはこれまでも何度か経験してきた。これもNBAの一部なんだ」

ステフ・カリーは昨日の練習について「素晴らしい雰囲気だった」と語った上で、この件についてもコメントしている。「明らかに良くない場面だったけど、このチームには信頼のベースがある。僕らは2人がどんなヤツかちゃんと分かっている。この件があっても、最高のバスケをやっていこうとする姿勢に変わりはないよ。個人的な問題はそれぞれ自分で解決するものさ」

この件はこれで鎮火しそうだが、契約問題が片付くまで火種は静かにくすぶり続けるだろう。かつてグリーンはケビン・デュラントと問題を起こしている。同点で迎えたラストポゼッション、パスを要求するデュラントを無視してドライブに行ったグリーンはファンブルでチャンスを潰した。延長戦に入る前に、デュラントから説明を求められたことでグリーンは逆ギレし、冒涜的な言葉を返している。試合後のロッカールームでも一騒動あり、ここでは「お前がいなくてもウォリアーズは強い」とデュラントに言ったそうだ。

この時は冒涜的な言葉が決定打となり、グリーンにはクラブ側から1試合の出場停止が科されている。ただ、デュラントはこの事件をきっかけに移籍してしまったのだから、火消しは十分でなかったことになる。今回はグリーンとプールで立場の違いが大きいこともあり、形ばかりは収まりそうだが、だからこそトラブルが見えないところで進行し続ける可能性は小さくない。王者ウォリアーズにとって数少ない懸念事項であることは間違いない。