「僕にとっては見逃すことのできないチャンスだった」
ジェイレン・ブランソンは今オフのフリーエージェントの目玉の一人で、4年1億1000万ドル(約150億円)の契約を結んでニックスの一員となった。昨シーズンにマーベリックスで結果を出したことで評価を高め、高額契約を手にしたのだが、彼に言わせればフリーエージェントは「ひどい経験だった」そうだ。
「移籍についての報道の多くは事実ではない」とブランソンは言い、彼の契約を巡りニックスがリーグからタンパリングの疑いで調査を受けていることについても「リーグから僕には何の連絡もない。何の調査もされていないんだ」と語る。
移籍にまつわる様々な憶測と高額年俸、タンパリング調査の話題ばかりでうんざりしたようだが、ニックスの一員として正式にスタートを切ることへの意欲は高く、「僕にとっては見逃すことのできないチャンスだった。父が働くチームでプレーするなんて映画みたいで、それが実現したことに興奮しているよ」と語る。
彼の父、リック・ブランソンはトム・シボドーのアシスタントコーチを務めている。この両者はブルズ時代から一緒に働いており、デリック・ローズも含めて当時から見知った存在だ。そしてニックスはリックが現役選手としてプレーしていた時代にアリーナに通った地元のチームだ。
「完璧なチャンスだからこそ、僕はベストを尽くしたい」と彼は言う。
マブスでは絶対的なエースであるルカ・ドンチッチを隣でサポートする立場だった。とはいえそれは昨シーズンだけで、それ以前はベンチから出る若手にすぎなかった。185cmのガードというだけで、なかなか評価を得られないのがこの世界だ。それでも彼は昨シーズン、先発に定着するとドンチッチに次ぐ16.3得点を記録。プレーオフでは21.6得点とスタッツを伸ばした。
ようやく評価を勝ち取った今、ニックスではさらに上のパフォーマンスが求められるが、彼は落ち着いている。「中学や高校でプレーしていた時から、僕は誰かに認められようとは考えてこなかった。僕は自分の信じることをやり、『ベストを尽くしたか』と自分に問いかけてここまでやってきた。ニックスでも同じで、自分の力を誰かに認めてもらわなきゃいけないとは思わない。自分のベストを尽くし、チームに貢献することだけを考えるよ」
ニックスは一昨シーズンに8年ぶりのプレーオフ進出を果たしたものの、経験不足であっさりとファーストラウンドで敗退した。若いチームはその経験を糧に成長すると期待されたが、昨シーズンは37勝45敗と期待を裏切った。今シーズンはプレーオフ進出を目指すところからやり直すことになる。
「まずはプレーオフ進出が目標だ」とブランソンは言う。「ジュリアス・ランドルを始め良い選手が揃っているから、良いケミストリーを作って、お互いのことをよく知りサポートできるようになればプレーオフに行ける。自分たちを大きく見せるつもりはないけど、本当にそう思っているよ」
落ち着いた表情で淡々と言葉を発するブランソンは、浮かれてもいなければ余計な気負いもない。ニックスに求められるリーダーとは、そういうタイプの選手であるはずだ。