平下愛佳

指揮官は「大会前、世界一のシューターになると話をしていました」と明かす

バスケ日本代表は、女子ワールドカップ2022の初戦でマリ代表に89-56で快勝した。試合序盤はマリのフィジカルの強さを生かしたアグレッシブなプレーに苦労し、開始4分で5-5とロースコアの立ち上がりとなった。しかし、ここで流れを日本に引き寄せたのは平下愛佳だった。第1クォーターだけで3ポイントシュート3本中3本成功を含む11得点をマークし、日本が先手を取る立役者となった。

その後も高確率でシュートを決め続け、16分25秒のプレータイムで3ポイントシュート6本中5本成功を含む17得点をマーク。本日、日本代表はチーム全体で3ポイントシュート37本中16本成功、成功率43.2%と見事な長距離砲だったが、それも平下の活躍があってこそだった。

今大会の代表メンバー12名の中で平下は20歳とチーム最年少かつ、今回がフル代表では初の世界大会となる。普通なら初戦は緊張して本来の力を発揮できなくてもおかしくない。だが、平下にそんな心配は無用だった。「全く緊張がなかったわけではないですが、コートに入れば自分のプレーをやるだけで、気持ち良くシュートを打てていました。緊張というより楽しめていたと思います」

こう振り返った平下は、いつも通りのプレーができたと自身のパフォーマンスを次のように語った。「毎試合、自分のタイミングでパスが来たらしっかり打ち続けることを意識しています。今日もチームメートがノーマークを作ってくれ、良いパスが来た時は絶対打つと決めてやっていました」

恩塚享ヘッドコーチは、初の世界大会で申し分のないデビューを飾った平下を、次のように称えている。「素晴らしいシュート力とそれだけでなくマインドセットも素晴らしいです。シンプルに自分の力を信じて、チャンスを見逃さずにシュートを打っている。チャンスを嗅ぎ分ける匂いを感じられる特別な選手と評価しています」

今大会、日本はチーム随一のシューターである林咲希が故障のため無念の欠場となっている。東京五輪で示したように林の爆発力、ここ一番で決めきる勝負強さは、日本の大きな攻撃オプションとなっていた。それだけに目標とする金メダル獲得には林の穴を埋めるシューターの台頭が不可欠と見られていたが、大会初戦で早くも答えが見つかったかもしれない。

ちなみに恩塚ヘッドコーチにとっては、平下のステップアップも想定済みで「ワールドカップ前に、彼女は世界一のシューターになるという話をしていました」と、絶大な信頼を寄せていることを強調している。

明日のセルビア戦に向けて、平下は「日本のスピードのあるバスケをしっかりやれば勝てると思うので、今日みたいに良い流れでできればと思います」と意気込みを語る。今大会、大きな飛躍を遂げるシンデレラとして、これからの平下のプレーがさらに楽しみになる鮮烈なパフォーマンスだった。