昨夏、島根スサノオマジックは安藤誓哉、金丸晃輔、ニック・ケイといった代表クラスの選手を獲得し、大型補強に乗り出した。その結果、チームのB1最高勝率となる7割2分5厘を叩き出し、クラブ史上初となるチャンピオンシップに進出し、セミファイナルまで勝ち進んだ。そんなチームを牽引したのがアルバルク東京から移籍してきた安藤だ。個人としても得点とアシストでキャリアハイを更新した安藤に、昨シーズンの振り返りと継続路線で挑む今シーズンへの意気込みを聞いた。
「昨シーズンの反省を挙げるなら、今から優勝するための準備をしないといけない」
――安藤選手にとって島根加入1年目となった昨シーズンはどんなシーズンでしたか? クラブ初のチャンピオンシップ、さらにセミファイナル進出を成し遂げました。
チームとして結果は出したけど、終わってみればもっとやれることがあったと思うし、優勝を目指すための準備をシーズン初めからすることが一番大切だったんじゃないかなと思います。昨シーズンの反省を今シーズンに向けて一つ挙げるとすれば、もう始まっているけど本当に今から優勝するための準備を常にしなきゃいけないということ。
――「優勝を目指せるチームにする」と、かなりの覚悟を持って移籍して挑んだシーズンだったと思いますが、準備不足だったイメージですか?
うーん……、その時はベストを尽くしていたと思うんです。ただ、やっぱり終わってみて、少し離れたところから振り返るとっていう話ですかね。
――目指していた優勝には届かなかった悔しさはあると思いますが、クラブ初のチャンピオンシップ出場達成という満足度よりも、セミファイナル敗退という悔しさの方が大きかったということでしょうか?
悔しさはもちろんありましたし、(セミファイナルの)琉球戦後のインタビューでは「充実していた」と言いましたが、満足とかは全くしていなくて。やっぱり上に行けば行くほど、もっと上に行きたいという欲が個人的にも強くなりますし、率直に言うと満足はしていないです。今シーズンはさらに難しくなるだろうなというのも踏まえながら、今は準備をしていますし、モチベーションもあります。
――そういった意味では、昨シーズンの経験があるから準備がしやすいなどはありますか?
バスケットボールという世界なので、昨シーズンも今シーズンも1シーズンごとに区切りはもちろんあります。だけど、メンバーも2人しか変わらない中で挑む2シーズン目だし、チームのビルドアップというところでは、昨シーズンから繋がっている意識はありますね。特に僕はそこを意識しています。
「今シーズンはウチにとってすごく大事なシーズンになる」
――今言ったように島根は継続路線で今シーズンに挑みます。安藤選手個人としては、大幅入れ替えよりも継続路線の方がやりやすいですか?
どっちも良くて、どっちも悪いんですよね(笑)。昨シーズンはもともといた選手もいましたけど、バスケットスタイルは明らかに変わって新体制になったので、「やらなきゃいけない」という気持ちもあったし、新しくやる楽しみもありました。それにリーグでも上に行けるんじゃないかという期待感もあってガムシャラにできたんですよ。それは新しいチームの良いところです。
ただ、このリーグって積み重ねているチームはなかなか崩れないんですよ。やっぱりチャンピオンシップに出ているチームは昔から強いですし、主力選手がそんなに変わっていない強みがある。普段は意識していないけど、勝ち方を知っているからなかなか負けないし、立て直しも早くて崩れにくい。だけど、2年目あたりの『これから積み上げていこう』という段階は、相手も研究してくるし、どのチームもキツかったシーズンになったと思うんです。
その上で、今の上位チームは5、6シーズンとか積み重ねているので、相手のスカウティングや対抗策に対しての対応策ができているんですよ。そういうことを考えると、今シーズンはウチにとってすごく大事なシーズンになるのかなって。今シーズンを乗り切って積み上げることができたら、メンバーがちょっと変わったとしても島根は崩れないチームになると思っています。
――アルバルク東京出身の安藤選手だからこその視点ですね。
そうですね。だから、新しく入れ替えたチームと継続するチームって、どっちも良いし、どっちも悪い感じです。でも、これはどこの国でも、どの選手でもあることだと思います。
昨シーズンは勝手に責任感を背負って、自分にプレッシャーをかけて鼓舞してやっていました。でも、今シーズンはファンの方も期待しているだろうし、自分自身に「そんなに甘くないよ」って言い聞かせながらやっています。相手からスカウティングされるのもありますが、結局は自分たちのダメな方の慣れもあって、そこが大きいと思うんですよ。
――キャプテンとして、どうやって慣れさせないようにするんですか?
これは一人ひとりが気づくしかないですね。口で言っても分からないですし。だから今考えてみるとアルバルクでバックtoバックしたあの時のメンバーはすごいと思います(笑)。
――話は変わりますが、A東京にいた頃と変わったなどと言われることはありますか?
プレーが自由になったとかよく言われますね。でも、自由とかではなくて、このチームでのプレースタイルの責任を自分自身全うしようとしているだけです。周りからは比較されますけど、僕自身はそのチームが求めているプレースタイルならどんなスタイルでもできる自信があります。今いる島根でアルバルクの時のスタイルでプレーしても、このチームの目標にはたどり着かないと思うし、逆にアルバルクでこのプレーをしても、アルバルクの目標に対しては力不足になると思っています。
――結果的にということですね。オフコートではどうですか? メディア対応とかでもハツラツとしているなというか……(笑)。
どうだろう、年齢も関係あるんじゃないですかね(笑)。島根に来たから考え方が変わったのかとかは自分では分からないですね、人が感じることなので(笑)。
「MVPを狙うために数字を増やすわけではありません」
――では、新シーズンのチームの強みを教えてください。
まずはティフェンスの意識を変えています。昨シーズンよりも守備が良くなると思うし、良くならなきゃいけないと思っています。ディフェンスを強化した部分から展開される走るバスケを見てほしいですね。長いシーズンを戦うと、どうしても走りきれなくて、昨シーズンの後半戦はオフェンスレーティングが落ちてしまいました。今シーズンは走り切りたいと思います。
――スタッツについても聞かせてください。昨シーズンは平均15.7得点、5.7アシストを記録し、ともにキャリアハイを更新しました。安藤選手自身、「この数字が良いと調子が良い」といったバロメーターはありますか?
なんだろう……。最後のアイソレーションのパーセンテージとか、ポイントパーポゼッションとか。あとは第4クォーターに入ってからの得点が高いと勝利に結びついているんじゃないかなと思います。
――クラッチタイムの効率性とか、そういう部分ですね?
そうですね。数字でバロメーターと質問されると、体感的にはそういうパターンかなと想像しました。僕自身、スタッツは見ますけど、そこまでは気にしていないです。僕は『何点』とかじゃなくて、NBAが出しているような数字を出してほしいなと思っているんです。そうするとファンもバスケットのことをもっと詳しくなるし、プレーヤーだけじゃなくてファンのIQレベルとか全部が上がると思うんですよ。やっぱり、日本人はもっとバスケットに詳しくならないとなと思っています。
あとは3ポイントシュートのアテンプト数ですかね。アグレッシブに打てていない時は微妙な感じがしていました。それと、得点に絡まなくてもハンドラーのポゼッションが少なかったりする時は、個人的に微妙じゃないかなと思っています。ボールを持っている時間は関係なくて、ポゼッションの回数だったり、ボールを持っている回数ですね。
――先ほど「数字は気にしない」とのことでしたが、クラブのTwitterで「MVPを目指す」と言っていました。数字を残さないとMVPレースには参加できないと思いますが、MVPを取るためにはどうしたらよいのでしょうか?
数字を取りにいったからMVPを取れるわけじゃないですよね、逆です。勝利に結びつくプレーをすれば、数字もついてくるから結果的にタイトルを狙える。もちろん数字は大事ですし、どこの国のリーグでもMVPレースは絶対に数字が必要です。でもMVPを狙うために数字を増やすわけではありません。
それに今までのBリーグのMVPは数字だけじゃなくて、インパクトも入っていると思います。ただ、そこは僕が自分で投票しているわけではないですし、例えば僕に200票入ったとしても、その人たちが感じた僕のインパクトが何だったのかは僕は知らないので。でも、もっと試合を支配していく、『ドミネート感』は大事だと思っています。
――最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
昨シーズンで島根スサノオマジックもリーグの上位に来たということは分かってもらえたと思います。今シーズンは本当にトップを狙いに行く姿勢でシーズンを戦っていく姿をファンの人にも見てほしいと思うので、応援よろしくお願いします。
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