スー・バード

「悲しんでいると思われたかもしれませんが、あれは幸せの涙です」

シアトル・ストームはプレーオフのセミファイナルでラスベガス・エイジズに敗れてシーズンを終えた。それはすなわち、今シーズン限りの引退を表明していたスー・バードのキャリアが終わったことを意味する。

シアトルで行われた試合とあって、試合終了後はファイナル進出を決めた相手チームではなくスー・バードが主役となった。コート上でのインタビューでバードは「20年過ごしたここを離れるのは寂しい。ファイナルに行きたかったけど、今シーズンのチームの一員であることをとてもとても誇りに思います」と語った。

「このフランチャイズで、このファンのためにプレーするのは……」と言ったところで、満員のスタンドからMVPコールが沸き起きる。バードは「ほら、こういうこと」と笑顔を見せ、ファンのチャントに耳を傾けた。

そして、こんな言葉をストームのファンに送っている。「私の後に出てくるポイントガードが、このチームの伝統を引き継いでくれるはず。このリーグで優勝を争い、このファンをハッピーにしてくれると思っています」

2002年のWNBAドラフトでシアトル・ストームの1位指名を受けたバードは、そのキャリアをストームに捧げた。ストームではWNBA優勝4回、またアメリカ代表でも絶対的な司令塔として長くチームを牽引し、オリンピックでは2004年から5大会連続で金メダルを獲得している。

試合後の会見では「最後の試合になることは当然分かっていましたが、試合が進むにつれてそれを肌で感じて悲しい気持ちになりました。でも、ファンのみんながそばにいてくれたから、試合が終わってもしばらくコートを離れる気持ちになれなくて、最後にコートでお礼を言いたかったし、たくさんの幸せを味わうことができました」と語る。

「引退を考え直すことはありません。身体はどこも悪くなくて、だからこそ引退を決めるのが難しかったのですが、それを乗り越えての決断なので。バスケが恋しくなるのは当然、でも選択は正しかったと確信しています」

「泣いていたので悲しんでいると思われたかもしれませんが、あれは幸せの涙です」と語るバードは、「とても楽しかった。またすぐに会えます」という言葉で引退会見を締めた。