「チームの期待に応えられたかと言えばまだまだ」
9月1日、WNBAのワシントン・ミスティクスでプレーしていた町田瑠唯が帰国し、メディア対応を行った。初の海外挑戦となった町田は2番手のポイントガードとして36試合に出場し、平均12.9分のプレータイムで1.8得点、2.6アシストを記録した。日本とはまったく違うタフな環境で全試合出場とローテーションの一員として戦い抜いた一方で、スタッツが示すように本領発揮とはならなかった部分もあった。
「プレーオフに進出しましたが、(初戦敗退と)悔しい結果に終わってしまいました。WNBAの舞台で戦えて、いろいろな経験ができましたし、すごく刺激を受けて戻ってこられたと思います」
こう第一声で今夏の挑戦を語った町田は、自身のパフォーマンスを次のように総括している。「36試合、出させてもらったという気持ちが強いです。チームの期待に応えられたかと言えばまだまだで、納得がいった部分はないです。アシストだけではダメだなとあらためて感じさせられました。あとは細かいスキル、パスの質などすべてでちょっとずつ課題が増えている感じなので、それをしっかり克服していきたいです」
非凡なパスセンスと卓越したゲームコントロールはミスティックスでも光った。それでも、1点台の数字が示すように得点面では悔いが残る結果に。「シンプルにもっとアグレッシブにやれば良かったです。控えで出る分、流れを気にしたり、ポイントガードとしての役割をやろうとしていましたが、もうちょっと自分から攻めてよかったところはあったと思います」
WNBAへの適応を壁とは感じず、心身ともにタフに
初の海外挑戦かつ、その舞台が世界最高峰のWNBAということもあり、決して順風満帆ではなく、町田はさまざまな困難に直面した。ただ「失敗とか悩んだことはありましたが、それでネガティブにならずポジティブにとらえられていました」と、困難を乗り越える過程をどこかで楽しめるたくましさがあった。
「最初、慣れるまでに時間はかかりましたが、やっていくうちにチームのスタイル、WNBAはこういう世界と理解していきました。この部分については、壁と思わなかったというのが正しいです。自分らしいプレー、求められていることをやろうとしていて空回りしていた部分についても、途中で分析してアジャストできたのが良かったです」
そして、充実した時間を過ごせたことで、WNBAへの挑戦を今回限りで終わらせるつもりはないという。「シンプルに視野が広がりましたし、いろいろなスタイル、考えがあると感じました。チャンスがあれば、来年ももちろん行きたいと思います」
また、町田は今夏の経験を様々な部分で富士通レッドウェーブにも還元していきたいと考えている。その内の一つが、チーム内での立場に関係なく言いたいことを言い合える環境作りだ。「チーム全員によるミーティングで、みんなが思っていることをしっかり話せる。試合に出ている出ていないや年齢に関係なく、それぞれが気付いたことを発信していく。それを今のチームでも当たり前になるような雰囲気を作っていきたいです」
さらに町田は「自分の世界が広がったと思います」と、バスケットボールに限らず、一人の人間としていろいろと得るものがあったという。そう感じることができるのはミスティクスのおかげと強調した。「今まで本当に海外は考えていなかったですが、今回アメリカに行ってすごく好きになりました。アメリカを離れるのが寂しいくらい好きなチームに出会えました。ミスティクスは言葉を十分にしゃべれないのにコミュニケーションを取ってくれて、家族みたいなチームで馴染みやすかったです。今回、WNBAでのプレーが楽しかった、離れたくないと思ったのはチームのおかげです」
貴重な経験を積み重ね、心身ともにグレードアップを果たした町田。今度は日本でどんなプレーを見せてくれるのか、より楽しみになる今回の取材での彼女の言葉だった。