5年前の前回大会ではドンチッチが台頭したスロベニアが優勝
ユーロバスケット前回大会ではスロベニア代表がエースのゴラン・ドラギッチに『神童』ルカ・ドンチッチの台頭もあり、9戦全勝で優勝を果たしました。5年が経って知らない人のいないスーパースターに成長したドンチッチですが、NBAドラフトで指名される前の18歳が見せた脅威のパフォーマンスに世界が度肝を抜かれました。若き才能が一気にブレイクするのがこういう大舞台だけに、今大会もニュースターが呼び起こす波乱は楽しみです。
最も期待したい若手はボスニア・ヘルツェゴビナのジャナン・ムサです。2018年のドラフト29位でネッツに指名された期待の若手でしたが、ローテーションに入ることすらできず、わずか527分プレーしただけでアメリカを去りました。しかし、昨シーズンに加入したスペインのBCブレオガンでは絶対的なエースとしてリーグ得点王とMVPに輝いたのです。中心選手としての役割さえ与えられれば、結果で答えることを示しました。
大会直前に行われたフランスとのワールドカップ予選では、ユスフ・ヌルキッチとともにチームを牽引し、ダブルオーバータイムの大接戦の中、17得点6リバウンド5アシストとオールラウンドな活躍でチームに勝利をもたらしました。今大会でもフランスと同じグループに入っており、先の勝利が偶然ではなかったことを証明するチャンスです。ドラフト時に19歳だったムサはまだ23歳で、日本で言えば大卒1年目が終わったばかり。この大舞台で大きく羽ばたくことが期待されます。
同じスペインリーグのバルセロナでプレーするロカス・ヨクバイティスは、21歳ながら強豪リトアニアでスターターの座をつかみ取りました。ワールドカップ予選のモンテネグロ戦で10アシストを記録した左利きのポイントガードは、当たり負けしないフィジカルと正確なシュートを武器にオフェンスをクリエイトしていきます。
リトアニアはドマンタス・サボニスとヨナス・バランチュナスの強力インサイドを誇るだけに、若いヨクバイティスのゲームメークが勝利へのキーポイントになりそうです。
ヨクバイティスはすでに2021年のドラフト34位で指名されていますが、プレータイムの保証されないNBAではなくスペインリーグとユーロリーグで能力を高めてきました。今回のユーロバスケットでチームメートのNBAプレイヤーを操って自信を深めれば、近い将来NBAへとやってくるでしょう。
1年前の東京オリンピックにも出場した20歳のウスマン・ガルバは、スペイン期待の若手ですが、ロケッツでのルーキーシーズンは散々な内容でした。特徴を出しにくい戦術で、スペイン時代とは違う役割を与えられ、思うようなプレーができず、ケガでの欠場もつづいて24試合の出場に留まりました。
さらには今年のNBAドラフトでポジションがかぶるジェイレン・スミスやタリ・イーソンが指名されたことで、新シーズンにプレータイムを得られるのかすら分かりません。ユーロバスケットは自身の価値を証明する貴重な機会になります。
ガソル兄弟が代表引退したスペインは世代交代の過渡期ですが、今年行われたU20とU18のユーロバスケットで優勝、U16は準優勝と次の世代も育っており、ガルバには新世代の中心選手へ成長することが期待されます。スペインの新時代の象徴になれるか、まずは今大会でチームに勝利をもたらし、世代交代を大きく前進させたいところです。
ボスニア・ヘルツェゴビナ、リトアニア、スペインの3カ国はNBAプレイヤーを擁し、上位進出が期待できる一方で、優勝するには戦力不足に映ります。しかし、前回大会のドンチッチのようにニュースターの登場はすべてを変えてしまう影響力をもたらします。立場も経験も異なる3人には、大舞台で自分自身の存在価値をアピールしてもらいたいです。