富樫勇樹

「スピードは彼の持ち味ではない」

バスケットボール男子日本代表は本日、ワールドカップ2023アジア地区予選のWindow4、カザフスタン戦に臨む。

カザフスタンとはアジアカップの初戦で対戦し、結果的に100-68で快勝したが、前半は45-48と苦戦を強いられた。富樫勇樹も「前半はかなり苦しんだ印象がある」と振り返ったが、ディフェンスから主導権を握った後半のパフォーマンスを覚えており、良いイメージを抱いている。

「スイッチングディフェンスに変えてからすごく良くなり、後半にディフェンスから走って一気に点差が開いていった試合だったと思います。最近の試合はほとんどそれ(スイッチング)でやってきて、良いローテーションもできているし、アジアカップの時よりもチームはステップアップしています。プレッシャーに弱いのはこの前の試合で分かっているので、しっかりボールプレッシャーとディフェンスから良いリズムをつかみたいです」

今回のカザフスタン戦のエントリーメンバーの中で一番のサプライズ選出はニック・ファジーカスだ。2019年ワールドカップ以来の代表復帰となるが、富樫も彼の存在を頼もしく思い、共闘を楽しみにしていると言う。

「イラン戦は帰化選手がいない中で戦ったのもあって、こうやって試合に参加してくれることは非常にうれしく思います。ニックはもう37歳ですけど、Bリーグでもいまだに毎年のように活躍している選手なので、一緒にやるのが楽しみです。ああいう選手と一緒にプレーできるのは代表とかでしかないですし、練習で一緒のチームでやっていても『わぁ、すごいな』と思う瞬間は結構ありました」

ファジーカスは2019年のワールドカップ予選で6試合に出場し、平均27.2得点を挙げて地力出場を勝ち取る原動力となった。しかし、現在の日本はトム・ホーバスヘッドコーチの下、3ポイントシュートとトランジションを軸とする高速バスケットボールを目指しており、機動力に欠けるファジーカスがフィットするかどうかは未知数だ。富樫も「本人も分かっていると思いますが、スピードは彼の持ち味ではないですし、リズムが変わる部分はもちろんあると思います」と冷静に言う。それでも、富樫はファジーカスが持つネガティブな部分よりもポジティブな部分なほうが勝ると確信している。

「今までは運動量で試合をしてきた部分もありますが、それはそのメンバーだからこそやらなきゃいけなかったですし、ニックが来たことでニックがいる時間帯といない時間帯ではペースやバスケットが多少変わるところはあると思います。でも彼の器用さを最大限に生かせばマイナスになることはないし、プラスになる。ポイントガードとしてそこを上手く使い分けるじゃないですけど、そこはしっかりコントロールしていきたいです」

また、富樫は「特に長くやってきているメンバーはトムさんがやりたいスタイルをしっかり理解していて、みんなもやりやすいと思っている」と、現在のスタイルが浸透し始めていると強調した。このタイミングで異質なファジーカスを起用することは、これまで積み上げてきたものを壊す危険性をはらんでいるとも言える。そうならないためにも、司令塔である富樫のパフォーマンスがより一層重要な意味を持つ一戦になりそうだ。