第2クォーターの失速「いつものリズムでプレーさせることができなかった」
ワールドカップ2023予選Window4の初戦、バスケットボール男子日本代表は敵地でイラン代表と対戦した。政治的な事情などもあって指揮官トム・ホーバスが不在、さらに帰化選手抜きのベンチ登録11名のみと万全の体制で臨むことができなかった。馬場雄大が27得点と活躍し若手のステップアップもあって最後まで食い下がったが、ここ一番の決定力で上回ったイランに68-79で敗れた。
ヘッドコーチ代行として指揮を執った佐々宜央は試合後の会見でこのように振り返っている。「イランは常にタフな相手ですが、選手たちは本当によく戦ってくれました。もちろんリバウンド、ターンオーバー、オフェンス面についてなど解決しなければいけない部分はありました。特に第2クォーターはわずか5得点に終わりましたが、僕が選手たちにいつのもリズムでプレーさせることができなかったです。ただ、すぐに日本で今度はトムコーチの下で試合があります。完璧な試合をやってくれると思います。選手たちに感謝していますし、イラン代表に勝利をおめでとうと言いたいです」
また、ホーバスヘッドコーチとは密に連絡を取り合っていて、「トムとはハーフタイムに電話で話しましたし、メールをくれたりしました」と明かしている。帰化選手不在もあり、今回の日本はいつも以上にサイズ不足で、イランは218cmのハメド・ハダディのローポストを起点に攻めてきた。ハダディは13得点10リバウンド4アシストを記録したが、日本は積極的にダブルチームを仕掛けるなどプレッシャーをかけ続け計7ターンオーバーを奪取と見事な対応だった。ガードのベナム・ヤクチャリに3ポイントシュート9本中5本成功を含む30得点を許してしまったが、チーム全体として及第点のディフェンスだったと佐々は語る。
「メインとしていたのは(モハマッド)ジャムシディ、ヤクチャリ、ハダディ、(アルサラン)カゼミといった中心選手たちを止めることでした。僕たちはサイズがなく、いくつか点数を取られましたがハダディには良い対応ができたと思います。また、総合的に見てディフェンスは良かったですが、イランの若い選手たちがビッグショットを決めました。ただ、79失点はOKな数字です」
「3ポイントシュートが必要ですが、ペイントアタックをしないといけない」
一方でオフェンス面については、「3ポイントシュートの成功率が30%以下でした。日本は毎試合3ポイントシュートをスプラッシュさせないといけないですが、今日はそれが来なかったです」とコメント。第1クォーターこそ爆発したが、その後は失速し最終的には40本中11本の成功(成功率27.5%)に留まった3ポイントシュートの精度を課題に挙げる。また、第2クォーターで5点に終わった要因にもなるなど、3ポイントシュートに依存しすぎてペイントアタックが不足していたことが痛かったと続ける。
「日本には3ポイントシュートが必要ですが、同時に馬場が第4クォーターでやってくれたようにペイントアタックをしないといけないです。第2クォーターの僕たちは消極的な攻めになっていました。これはメンタルゲームで、僕は上手く対処できなかったです。もしヘッドコーチがいたらポジティブな言葉をかけていたでしょう。ゴール下に大きいハダディがいても、僕たちはアタックしないといけない。後半に入って、そこは少し改善することができましたが、試合全体を通してアタックしないといけないです。」
ちなみに佐々がヘッドコーチを務める宇都宮ブレックスには長年、イラン代表のコーチングスタッフを務めていたモー・アベディニが今シーズンからアシスタントコーチとして加入している。この点について会見で質問された佐々は、「彼とは代表チームについて話すのはやめようと言っていました(笑)」と語り、イラン代表への敬意を強調している。「イランは常に僕たちを破っており、日本がいつも勝ちたいと思っているチームです。イランバスケットボール界が、僕のチームを助けてくれることを期待しています。そして、国内リーグで連覇したいです。」
イランの底力に屈したが、一方でインサイドで身体を張って奮闘した吉井裕鷹、井上宗一郎など再び若手選手たちがステップアップした姿を見せてくれた。「最も重要なことは40分間ハードにプレーすることです。日本には明るい未来があります」と佐々が語ったように、敗戦は悔しいが少なくない収穫も得られた。この成果を30日、ホームのカザフスタン戦で発揮し、今度は勝利という結果もしっかり得たい。