「自分がどこに行くのか、どんなプレーヤーになるのか。疑問ばかりが浮かんだ」
今オフのNBAは、リーグを代表するスター選手の一人、ケビン・デュラントの去就が決まっていないこともあり、新規契約やトレードの動きが例年に比べて遅めだ。フリーエージェント市場が解禁になって1カ月以上が経つが、昨シーズンにレイカーズでプレーしたカーメロ・アンソニーやドワイト・ハワード、ラジョン・ロンドなどのベテラン勢10選手は、いまだにどのチームとも契約に至っていない。
自分の行く末が決まらない不安な心境は、経験した人にしか分からないもの。昨夏にフリーエージェントとなり、スパーズからサイン&トレードでブルズに移籍したデマー・デローザンは、ドレイモンド・グリーンのポッドキャスト番組に出演した際に、フリーエージェント期間中に感じた不安な気持ちを振り返った。
「あの夏、フリーエージェントになった。物事は予定通りにはいかないことを知っているから、僕は疑心暗鬼に陥ってしまったんだ。自分がどこに行くのか、どんなプレーヤーになるのか。今後のことに対して、疑問ばかりが浮かんだ。知らない人も多いだろうけど、いつだってビッグネームは交渉が解禁されたら1日か2日で契約するのもなんだ」
デローザンは昨夏の時点で、すでにオールスターに4度選出され、アメリカ代表として出場した2016年のリオ五輪で金メダルを獲得と、人気と実力を兼ね備えた選手だ。それでも、2018年夏にカワイ・レナードを含んだトレードでラプターズからスパーズに移籍して以降は目立った活躍を見せることができないまま、フリーエージェントを迎えた。
結果的にデローザンのブルズ加入は素晴らしいものとなった。シーズン中には7試合連続で35得点以上、フィールドゴール成功率50%以上を記録し、ウィルト・チェンバレンが持つ6試合連続を抜いて歴代1位になった。また、2018年以来となるオールスターにも選出され、ブルズを5年ぶりのプレーオフ進出に導いた。
今でこそ穏やかな気持ちで当時を振り返ることができるが、「フリーエージェントになった数日間は不安ばかりだった」と、デローザンは言う。「1年契約でどこかに行くのか、最低額で契約するのかとか、そういうことを考えながらフリーエージェントを迎えた。だから、最初の3日、4日ぐらいは部屋から出なかったし、日没も日の出も見なかった。何が起こるか分からないから、それぐらい落ち込んでいたんだ。それに他の人たちがサインしているのを見て、周りは僕に『どうするんだ?』って聞いてきたけど、自分でもどうしたらいいのか分からない部分が多かった」
当時のデローザンと同じような心境の選手は少なからずいる。彼らの不安が払しょくされるする日はいつやってくるか。