キーファー・ラベナ

2000年以降は2勝8敗、アジアカップでは1勝5敗と分の悪い相手

『アジアカップ2022』はグループリーグが終了し、折り返し地点に入った。今夜、日本はベスト8をかけてD組3位のフィリピンと対戦する。日本とフィリピン、そしてインドネシアを含めた3カ国は、来年に開催するワールドカップの共催国であり、奇しくもベスト8をかけた一戦でホスト国同士が対戦することになった。

チームリーダーの渡邊雄太は今大会の目標について「若い選手が多いからといって、ただの経験で終わらせるつもりはなく勝ちにいく」と発言している。当然ながら、アジアカップはアジア王者を決める大会であり、来年のワールドカップでアジア最上位になってパリ五輪の出場権を勝ち取るには、なおのことベスト8に残って上位チームと真剣勝負の場数を踏まなければならない。ましてや、フィリピンには3名のBリーガーが参戦しており、知り尽くしているライバルとしても負けられない戦いだ。

今回、フィリピンはどのような編成で参戦しているか。2000年以降のフィリピンとの対戦からその歴史とチーム事情を紐解いてみたい。過去の『アジアカップ』での対戦成績は日本の1勝5敗で、2005年に66-64で勝利した以降は5連敗中だ(2009、2011、2013、2015年に対戦。2015年は2次ラウンドとセミファイナルで対戦して2連敗)。また、2019年に中国で開催されたワールドカップの予選でも2連敗している(2017年11月、2018年2月)。さらにフィリピンは2013、2015年の『アジアカップ』では、強力な帰化選手と国内選手を融合させ、2大会連続で銀メダルへと躍進した歴史もある。

FIBA主催の大会ではないが、『アジア競技大会』では2010年に日本が60-58で勝利しているが、2018年は80-113と大敗している。2000年以降、『アジアカップ』と『アジア競技大会』の2大大会において、2勝8敗と大きく負け越している相手がフィリピンだ。

レイ・パークスジュニア

リバウンドが最下位でインサイドに弱点

しかし、今回のフィリピン代表の顔ぶれからは、苦しい台所事情がうかがえる。フィリピンのプロバスケットボール(PBA)には、3大タイトルをかけた長期のカップ戦があり、現在は2つ目のフィリピンカップの真っ最中。そのため、国内のプロ選手を招集することができず、Bリーグでプレーする3名と、大学生および新卒プレーヤー、そして1人のPBA選手によって構成されている。

Bリーグからはキーファー(昨季は滋賀レイクスターズ)とサーディ(三遠ネオフェニックス)のラベナ兄弟と、2016年のオリンピック最終予選以来の代表となるレイ・パークスジュニア(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が選出されている。レバンガ北海道に移籍したドワイト・ラモスはアジアカップのメンバーに選出されていたが、負傷のために直前にメンバーを外れている。フィリピンは6月に韓国代表と強化試合を行っているが、ラモスはこの試合でエース級の働きをしていた。それだけに得点面で期待されていたラモスの欠場は大きな痛手になっている。

興味深いのが、日本以外にもアジア枠としてプレーする選手がいることだ。今季より、韓国(KBL)もフィリピン国籍の選手をアジア枠として獲得できることになり、5名の選手の入団が決定している。その中の3選手、ガードのサム・ジョセフ・ベランゲルとロン・ジェイ・アバリエントス、フォワードのウィリアム・ナバーロが代表入りを果たしている。中でもベランゲルは、昨年のアジアカップ予選で若手のキーマンとして活躍した選手であり、KBLでも期待されているルーキーだ。

今大会のフィリピンの最大の弱点はインサイド陣にある。グループラウンドではリバウンドが最下位の1試合平均30.7本(日本は8位で40.7本)。フィリピンもこの弱点を認識しており、「リバウンドを改善しないことにはベスト8には残れない」と、ヘッドコーチのチョット・レイエスは危機感を口にしている。

また、キャプテンであるキーファー・ラベナにやや疲労が見えていることも気になる点だ。キーファーは5月上旬にBリーグのシーズンが終了すると、5月中旬からは「東南アジアのオリンピック」と呼ばれる『東南アジア競技大会』に出場(インドネシアにまさかの敗戦で銀メダル)し、その後は韓国との強化試合を2戦行い(2連敗)、ワールドカップ予選Window3で2試合戦っている。

休みなく戦っているせいなのか、このアジアカップでの調子は決して良いとは言えず、身体にキレがない。それでも、グループラウンド最終のニュージーランド戦ではコンディションが上向きつつあり、17得点6リバウンド3アシストと奮闘。キーファーのコンディションの復調と統率力が勝負のカギを握るのは間違いないだろう。互いに負けられない事情を抱える、ワールドカップのホスト国同士の戦いは、今夜22時ティップオフだ。