ホーネッツ

HC人事でイレギュラー、方向転換したはずがハンドルを切って戻すことに

ジェームズ・ボーレゴを解雇し、新たなヘッドコーチとして迎え入れるはずだったケニー・アトキンソンに突如として就任を撤回されてしまったホーネッツは、ボーレゴ時代に培ってきたスピードを生かしたオフェンスを継続すべく、マイク・ダントーニ等が候補として挙がっていた中で、全く噂のなかったスティーブ・クリフォードに新たなチームの構築を託すことにしました。前ヘッドコーチが4年の月日を経て出戻るという珍しいケースですが、それ以上にクリフォードの戦術から大きく方向転換したはずが、急激にハンドルを切って戻すことになったのは衝撃です。

ケンバ・ウォーカーを中心としたオフェンスに、フィジカル面での強みを持った選手を並べた堅実なディフェンスが特徴だったクリフォード時代から、若手有望株をドラフトで集めて再建へと舵を切り、スピードと多彩なオフェンス、そしてリスクを恐れないアグレッシブなディフェンスを取り込んだボーレゴ時代では、ホーネッツは全く別のチームへと生まれ変わりました。クリフォード最後のシーズンとなった17-18シーズンと、ボーレゴになって4年が経過した昨シーズンでは、対照的なスタッツが並びます。徹底してターンオーバーを嫌がったクリフォード時代にリーグ3位の12.7から、リーグ10位の13.3へと増えたかわりに、速攻の得点は9.3点から16.3点へとジャンプアップしました。リーグ内の順位も28位から2位と弱点が長所へと変化したことになります。トラップディフェンスでボールを奪うだけでなく、ラメロ・ボールやゴードン・ヘイワードのようにリバウンドを取れば自らドリブルで運び、決定機を演出できるパスを出し、次々にトランジションを作り上げました。マルチスキルタイプを好んで起用したのもボーレゴの特徴です。

一方でリスクを負ったハイプレッシャーはディフェンスの体形を乱し、またスモールラインナップを好んだボーレゴになってリバウンド奪取率はリーグ27位の48.6%へと落ちました。フィジカルに守れる選手で強固にブロックを作り、ドワイト・ハワードがゴール下に君臨していたクリフォード時代はリーグ5位の51.2%と強みだったことを考えると、チームの長所が弱点へと変化したことも分かります。

ケンバによるドライブアタックが中心となり、強引でも個人能力で決めに行くスタイルだったクリフォード時代にリーグ24位だったアシスト数は、オフボールでの多彩な仕掛けとドライブとキックアウトを繰り返して連動していくボーレゴになるとリーグ1位の28.1へと増えました。ドライブ数が多い特徴は変わっていませんが、フィニッシュに行くことが前提のドライブから、ディフェンスを崩して展開するためのドライブへと目的が変化しています。それを示すようにドライブからパスを選択する回数は9.8から21.9へと大きく増えました。

最大の違いはパスワークから生み出されるコーナーでの3ポイントシュートで、リーグ最下位の4.4本から、リーグトップの11.3本へと真逆のスタッツを残しています。オフボールのポジショニングとボールムーブを重視したボーレゴらしい特徴が出ています。逆にインサイドでの力強い押し込みはクリフォードらしさなだけに、ここからどのように変化するのかが注目されます。

ホーネッツはマイルズ・ブリッジスを巡る騒動もあり補強は進んでおらず、新戦力はドラフトで指名したマーク・ウィリアムスくらいです。ゴール下専門のビッグマンを手に入れたことで、サマーリーグでは機動力の高いカイ・ジョーンズをパワーフォワードに回し、ツービッグを基本にするなど、クリフォードらしいラインナップへと変化しています。ボーレゴが重用したマルチなウイングが分厚く揃う中で、スタイルが全く違うクリフォードはどのような選手起用をするのか期待と不安が入り混じります。真逆のスタイルへとUターンするのか、それとも両者の良い部分を取り入れるのか、未知数のシーズンになりそうです。