今年の指名権を2つ、未来の指名権3つを使ったドラフトに
毎シーズンのようにドラフト外の選手が活躍するように、世界規模でのレベルアップにより、選手個人の実力とドラフト順位に相関関係は薄くなってきました。チーム事情に合った選手を指名する傾向は強まっており、その中でもサンダーの特殊性は顕著に表れています。
大学で9.9リバウンド、3.7ブロックを記録したチェット・ホルムグレンを2位で指名したのは、サンダーの弱点であるインサイドの弱さを補いつつも、ガードのようなスキルを使ってドライブの多いチーム戦術に合ったチョイスでした。線の細さは気になるものの、パワープレーよりも運動量とスピードが重視される戦い方だけに、即戦力としての期待がかかり、インサイドの要として、長くサンダーの中心になれる存在です。
ここまではロスターの弱点を埋めに行く補強として非常にわかりやすかったものの、さらに11位のウスマン・ジェンと12位でジェイレン・ウィリアムスを獲得したのは驚きでした。ガードにはエースのシェイ・ギルシャス・アレクサンダーに加え、ルーゲンツ・ドートがディフェンスの要として活躍し、昨シーズンのドラフトではジョシュ・ギディーとトレ・マンを加えており、既に飽和状態にもかかわらず、未来の指名権とトレードしてまでガードに新戦力を求めたのです。
共にガードとはいってもウイングのサイズがあり、ジェンは208cmと大柄でセンター相手にも戦える高さを持ち、ウィリアムスは219cmという脅威のウイングスパンを誇っています。共にポジションを問わずにマッチアップできるディフェンス能力があり、その上でガードとしての万能性を持ち合わせています。
現在の主力のアレクサンダーは211cmのウイングスパンを持ち、ドートはビッグマン相手にもパワー負けしないフィジカルを持ち、そしてギディーは異様にリバウンドに強いガードです。ポジションレスの時代らしく、それぞれが明確な武器を持って、どんな相手にでもマッチアップできる強みを発揮しているのがサンダーの特徴でもあります。この特徴はジェンとウィリアムスの獲得により、さらに色濃くなりそうです。
ホルムグレンも含めてオールラウンダーであることがサンダーにとっては重要で、プレーシェアはすれども役割分担はしない戦い方を加速させていきそうです。フロアを広く使い、ドライブとキックアウトを繰り返すオフェンスは、ガードが多い布陣には合っているだけに狙いとしても明確です。また、オールラウンダーばかりのロスターにおいて異分子となるジェイリン・ウィリアムスを2巡目で指名しており、ポイントセンタータイプのビッグマンとしてガードを生かす存在になれれば面白いです。
再建へと舵を切ってからドラフト1巡目指名権をかき集めてきたサンダーですが、今年の指名権を2つと、未来の指名権3つを使うドラフトとなりました。それは弱点を埋めてバランスよく戦う事よりも、偏ったロスターで特殊な戦術を構築することを選んだドラフトでもありました。常識にとらわれない面白いチームになりそうです。