篠山竜青

文・写真=鈴木栄一

序盤に得点力不足を露呈するも「ポジティブな感覚」

10月17日のシーホース三河戦、川崎ブレイブサンダースは苦しみながらも69-60で勝利を収めた。それでも司令塔の篠山竜青は「第3クォーターでふわっと入ってしまいました。その点に関してはメンタルな部分も少し影響していました。ガードとしては第1クォーター、第3クォーターの入りをしっかり締めて入らないといけない」と、前半で2桁リードと試合を優位に進めながら、第3クォーターに隙を見せて一気に追いつかれた点を反省した。

これで開幕から4勝1敗と順調に勝ち星を増やしている川崎だが、一方でエースのニック・ファジーカスが故障明けでまだまだゲーム勘が戻らずに本調子から程遠い状況もあって、リーグ屈指の攻撃力はここまで爆発せず。80点を超えたのは開幕戦だけで、この4試合のうち3試合で70点以下に終わっている。特に第1クォーターに関しては、開幕から16、11、6、10、15と得点が伸びていない。

この部分については、ファジーカスが開幕2試合を欠場、3試合目からもベンチスタートと、試合開始時にコートに立っていないのがこれまでとの大きな違い。だが篠山は「まだチームとして打つべきところか、どうなのか迷いが多少はあります」と語る一方で、ファジーカスが先発でいないことが影響だとは感じていない。

「千葉戦に関しては普通に切り替えを早くし、フリーランスの中で良いアタックができたと思います。滋賀に関しては形にこだわりすぎてしまったところがあって、パスが外でしか回らなくなり、ペイントタッチの回数が少なかったです。そこを踏まえて、今日は出だしからリングにアタックしてズレを作っていこうと言っていました。その部分はできたと思うので、ニックが試合開始から出ないからということで違和感を感じてはいないです」

このように篠山が語るのは、新外国籍コンビであるバーノン・マクリン、シェーン・エドワーズへの大きな信頼があるから。「バーノン、シェーンとも視野が広く、彼ら起点でパスがさばけます。そういうところをもっと生かし、僕や辻(直人)、長谷川(技)が思い切り良くもっと得点に絡んでいければ良いものができる。危機感というより、もっと積み上げていきたいというポジティブな感覚です」

篠山竜青

コントロール重視へのスタイル変化

マクリンとエドワーズは、非凡なパスセンスに加え高い得点力を持っている。このことが篠山の川崎における役割にも変化をもたらしつつある。昨シーズンまでの篠山は、代表の時と比較するとより積極的に自らシュートを狙っていくスタイルだった。しかし今シーズンはファジーカスが帰化選手となり、マクリン、エドワーズも個で打開して得点を取れる選手であることから、うまくパスを散らすコントロールの部分をより重視するような流れになりつつある。

「今シーズン、シェーンが3番ポジションをでき、引き出しが増えています。そこの部分でコントロールも意識してほしい、ということをスタッフと話しました。スタッツの面で志高くやっていかなければいけない部分はありますが、チームの中でどう得点に絡んでいくのか、どういうところでピック&ロールを選択するのかは、まだまだ自分としても模索しながらの段階です」

振り返れば篠山は、開幕直前のインタビューで「オフェンスに関しては苦しむだろうし、きっといろんな面でそれぞれがストレスを抱えることもあると思います。そういう状況でもディフェンスで守り抜いて、苦しみながらも勝てるようにしていきたい」と語っていた。それを考えれば、彼にとってある意味でオフェンスがいまいち爆発できていないのも想定内かもしれない。だからこそ、現状については「チームとして失点を抑えられているので、そこを我慢強くやっていく方が大事です」と、今はディフェンスで泥臭くプレーしていくことを強調する。

篠山竜青

エキップメントマネージャー就任による恩恵

開幕直後が手探りの段階であるのはいつものことだが、その一方ですでに大きなプラスとなって現れていることが川崎にはある。エキップメントマネージャーが就任したことで、「ユニフォームはもちろんのこと、ボディーソープからドライヤーまで、何から何までスタッフが用意してくれているんで、今はシューズだけ持ってくれば試合をして、シャワーを浴びてドライヤーをすれば帰れます」と篠山はその効果を語る。

今回、ナイトゲーム終了後で慌ただしい中、髪をしっかりセットして会見場に登場することができたのも、まさに「ロッカールームのサポートはNBA級です。これは学生さんたち、他のチームの選手たちにアピールしたいところです」と篠山が絶賛するサポート体制があってこそ。文字通りプレーすることにより集中できることは、これから過密日程が続く上で川崎に有形無形のプラス効果をもたらす材料になっていくかもしれない。