ウォリアーズ

文=神高尚 写真=Getty Images

昨シーズン成績
58勝24敗(西カンファレンス2位)、ファイナル優勝
主な加入
デマーカス・カズンズ、ヨナス・ジェレブコ
主な放出
ニック・ヤング、デイビッド・ウェスト(引退)、ザザ・パチューリア、ジャベール・マギー

主力は全員残留、リーグ最強チームの座は揺るがない

連覇を達成したウォリアーズは主力選手がそのまま残留しました。単に豪華なメンバーであるだけでなく、ロールプレイヤーたちの役割も明確で、イージーシュートを打たせるオフェンス設計が出来上がっています。リーグ最高の1試合平均得点113のうち、ケビン・デュラント、ステファン・カリー、クレイ・トンプソンの3人が平均73点と総得点の60%以上を奪っていますが、他の選手のフィールドゴール成功率も50%を超えており、高いシュート力を持つスター選手にマッチした戦術が練り込まれています。

オフェンスでボールの循環役となるドレイモンド・グリーンとアンドレ・イグダーラはディフェンスで主役を演じます。個人を守る強さだけでなく、読みの鋭さと反応の早さでヘルプディフェンスが上手く、特にアウトサイドで簡単にフリーを作らないチームディフェンスによって、スモールラインナップの優位性を存分に発揮してきます。攻守に役割分担がしっかりしており、高い戦術熟成度を誇るチームには死角が見当たりません。

さらにこのオフにはオールスター選手のカズンズを獲得しました。ただし、カズンズはケガの影響でシーズン前半は欠場の見込みです。ベテランのロールプレイヤーが減り、パトリック・マコーの契約も決まっておらず、新戦力で実績があるのはジェレブコのみ。他には若手が名前を連ねています。

チームとして戦力を放出したのはインサイドとシューターの2つの役割。プレーオフでも能力を示したジョーダン・ベルはガードまで守れるディフェンス力があり、高さで上回るダミアン・ジョーンズjr.はオフェンスで貢献できることを示したいところ。ヤングと再契約しなかったシューターにはクイン・クックがシーズン通して安定して決められるかが問われます。

一方で、補強したジェレブコはシューター系のビッグマンで、チームに必要な2つ役割をどちらも補う存在です。ウォリアーズの戦術にピッタリ当てはまりそうなスキルを持っており、新たな刺激をもたらしてくれるでしょう。未知数の若手と堅実な中堅選手を合わせる形でロールプレイヤーをマイナーチェンジさせました。

強すぎるウォリアーズ、ゆえに進む対策

死角という死角がないウォリアーズですが、唯一苦しめられたロケッツとの対戦ではイグダーラを欠いていたこともあり、デュラント、カリー、トンプソン、グリーンのプレータイムが40分を超えることも珍しくありませんでした。

スター選手を揃えて圧倒的な強さを誇るウォリアーズへの対抗策として『選手層』に活路を見いだすチームも増えてきました。昨シーズンのウォリアーズはペイサーズに連敗しましたが、このペイサーズが『選手層』を有効活用する代表的なチームです。スターターと変わらぬ力を持ったベンチメンバーを活用し、試合を通してフルパワーで向かってきました。役割分担が明確なウォリアーズに対して、誰もが主役として向かってくるチームは戦いにくい相手なのです。

ケガ人が多かった関係もあり、昨シーズンのウォリアーズはペイサーズ、ロケッツ、ジャズ、ブレイザーズの4チームに負け越しました。これはスパーズ以外のチームでは実に4年ぶりのことでした。オールスター選手を揃え、周囲を堅実なロールプレイヤーで固めるウォリアーズの強さはこれまでと変わらず、リーグを席巻するでしょうが、各チームがウォリアーズ対策を講じてきており、選手層に不安を残すだけに長いシーズンでは多少の苦戦することはありそうです。

昨シーズンは主力のケガに悩まされ、シーズン終盤には故障者が相次ぎ勝率を大きく落とし、ヘッドコーチのスティーブ・カーは「コンディショニングが最も大切」と言い切りました。その言葉通り、プレーオフにはしっかりと合わせてくるマネジメントの上手さもみせました。

この4年間で3度の優勝はチームに余裕を与え、今シーズンもプレーオフに照準を合わせてチームを作ってくるでしょう。長いシーズンを戦う上では、コンディションを最優先で考えてくる可能性が高いです。特にシーズン前半は若手たちのサバイバルレースになるかもしれません。

+++++注目すべき『脇役』+++++
ヨナス・ジェレブコ 昨シーズンはジャズで3ポイントシュート成功率が41%を超えるウォリアーズにはいなかったタイプのビッグマンは、ベンチからストレッチ4の役割やスモールラインナップ時のセンターなど複数の役割をこなす。