レブロン・ジェームズ

写真=Getty Images

「簡単に勝てると思ってしまった」と後悔

レブロン・ジェームズにとって、キャリアの分岐点はいくつかある。キャバリアーズからドラフト全体1位で指名された2003年、初めてNBAファイナルに進出した2007年、ヒートに移籍した2010年、キャリア初優勝を達成した2012年、キャブズに復帰した2014年、キャブズの球団初優勝に貢献した2016年、そしてレイカーズに移籍した2018年。しかし、プレーに対する意識が大きく変わったのは、2011年だった。自身が出演している『HBO』の『The Shop』で、マーベリックスにファイナルで敗れた経験を、レブロンはこう振り返った。

「あの時、簡単に優勝できると思った。リアルなプレーヤーたち(ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュら)とチームを組んだわけだからね。でも俺たちは負けた。まるで世界が崩壊したかのようだった」

「負けたことはうれしくなんてない。でも、あの時のファイナルの後、『いったい何があった?考え過ぎてしまって、自分の力を出さなかった。すべきプレーをしなかった。全力を出し尽くさなかったおかげで、眠れない日々を過ごしているんだぞ』と感じた。それからは、二度と同じ経験だけは絶対にしないと決めた。負けることもあるだろうし、すべてを勝ち取れないこともあるとは思う。でも、二度としくじらない、そういう気持ちに打ち勝てたことが、自分の最大の功績だと思っている」

負けたことも悔しかっただろうが、力を出し尽くさず、甘く考えていた気持ちが許せなかったのだ。ヒートを引っ張るようになったレブロンは、2011-12シーズンから2連覇を達成。2014年のファイナルではスパーズに敗れたが、キャブズ復帰後もプレーオフでは全身全霊を捧げるプレーを続けている。

もし7年前のファイナルでヒートが勝利し優勝していたら、今のレブロンはなかったかもしれない。『バスケットボールの神様』の気まぐれだったとしても、あの時以来、レブロンから慢心や油断は感じられなくなった。これからもレブロンがNBA史に残る偉業を達成すればするほど、『選ばれし者』が覚醒した瞬間として、2011年のファイナル敗戦がクローズアップされるに違いない。