残り1分を切って1点差という白熱したゲームに
「特にチームとしての作戦、大野(篤史)さんからの言葉はなかったので、呼びたかったらピックを呼んでも良いし、1対1をしたかったらして良いしという感じでした」
千葉ジェッツの富樫勇樹は決勝点となった残り12.5秒で決めた3ポイントシュートをこう振り返った。
5月8日、自力での東地区優勝を狙う千葉ジェッツは、レギュラーシーズン最終節でサンロッカーズ渋谷と対戦。SR渋谷もチャンピオンシップ出場をかけた最後の1枠を争っていたため、どちらも負けられない最終節となった。第1戦はリードチェンジを13回も繰り返す激闘の末に千葉が70-65で勝利。そして、優勝マジックを1にして迎えた第2戦も、残り1分を切って1点差という白熱したゲーム展開となったが、最終スコア73-71で千葉が勝利し、地区優勝を決めた。
第2戦、千葉は立ち上がりから、『守備のチーム』であるSR渋谷に負けない強度の高いディフェンスでSR渋谷をペイント内に入れさせない守りを見せる。第1戦ではSR渋谷のプレッシャーを浴び、なかなか自分たちのオフェンスが組み立てられないシーンも目立ったが、第2戦では富樫勇樹と大倉颯太を中心にいつも以上に速い展開のバスケットを行い、内外バランス良く得点を重ねた。また、ジョシュ・ダンカンとジョン・ムーニーがリバウンドを制することでSR渋谷に主導権を渡さず、千葉が2桁前後のリードを第3クォーター中盤まで維持していた。
しかし、そこからゲームの流れが変わる。SR渋谷は司令塔のベンドラメ礼生がファウルトラブルのためベンチに下がったが、代わりに入った渡辺竜之佑がゲームメークに加えてリバウンドに積極的に絡みにいくことでSR渋谷がリズムをつかんでいく。さらに、千葉は自分たちのファウルがかさんだことでリズムに乗れず、そして高橋耕陽に富樫との高さのミスマッチを突かれたこともあり、最大13点あったリードが第4クォーター開始2分でなくなってしまった。
その後は一進一退の攻防が続き、千葉の1点リード(68-67)で迎えた残り35.7秒。冒頭で触れた富樫の決勝3ポイントシュートが訪れる。富樫は巧みなドリブルで時間を使いつつ、マークにつく田渡修人を揺さぶって、残り12.5秒で見事3ポイントシュートを決め切った。
このシーンは富樫が先に語っているように、コーチからの指示はなく、富樫自身の判断で行ったプレーだと言う。「あのプレーの何回か前のプレーでピックを呼んでダブルチームまではいかないですけど、ビッグマンがずっと残っていてターンオーバーになった場面がありました。なので、1対1の方が自分のシュートを打てる確率が高いかなということで、ビッグマンには『来なくていい』とは伝えていて。ドライブするなり3ポイントシュートを打つなりは、その時の駆け引きなので決めていたわけではないですけど、ああいう状況でしっかりステップバックでスリーを決められたのは本当に良かったです」
「僕がそういう立場で試合に出る準備はしていた」
大野ヘッドコーチは激戦となった今節を勝利で終え、「正直、ホッとしています」と地区優勝を喜んだ。「コロナでのキャンセルがあったり大変でしたが、選手たちが自分たちの目標に向かって努力した結果だと思うので、選手に感謝したいです」
SR渋谷との2試合で、大野ヘッドコーチは初めて大倉を先発に起用した。その理由を「何かを変えないといけなかった」と明かした。千葉は直近の敗れた3試合、川崎ブレイブサンダース戦の3-21を筆頭に宇都宮ブレックス戦は0-11、琉球ゴールデンキングス戦は0-9と立ち上がりに苦戦していた。大野ヘッドコーチは言う。「ペースを作りたかった。得点は取れなかったけど、しっかりボールを動かしてもう一人のハンドラーのところでクリエイトしてもらおうと思いました。ここ数試合スタートが悪かったので、何かを変えないといけなかった。この2つは必ず勝たないといけなかったので、彼をデザインしました」
その大倉は、第1戦で3得点2リバウンド2アシスト、第2戦で6得点2リバウンド1アシストを記録。指揮官が言うように数字は伸びなかったが、富樫との2ガードとして、千葉のペースを作り出した。そして、大事なシーズン最終盤での先発抜擢について「練習からですが、僕がそういう立場で試合に出る準備はしていた」と言い、「本当に自分に与えられた役割をやるだけでした」と振り返った。
また、チャンピオンシップに向けて、こう続ける。「勇樹さんのマークがキツいところで僕ができることはたくさんあると思うので、もっともっとチームが良いリズムでバスケットができるようにするのが僕の仕事だと思います。ミスを減らして、もっとチームのやりたいバスケを出していけたらと思います」
「この勢いのままCSに行けるのはチームにとって本当にプラス」
決勝点を含む16得点3リバウンド7アシストでチームを牽引した富樫は「タフな2日間でした。内容もありますが、それ以上にこの2日間は勝ちにこだわっていて、泥臭くチームでつかんだ勝利なので東地区優勝できて本当にうれしく思います」と振り返った。
今シーズンの千葉はホームで25勝2敗と無類の強さを誇っている。それだけに、チャンピオンシップでセミファイナルまでのホーム開催権を得たことは大きな意味がある。富樫も「今シーズンはホームでかなり勝っている印象があって、数字にも表れている」と言うと、「この2勝もそうですが、チャンピオンシップに向けてホームでやれるので、この勢いのまま行けるのはチームにとって本当にプラスだと思います」と語った。
「この長いレギュラーシーズンはそれを決めるためだと思うので、チャンピオンシップをどこでやれるか。その権利を全員で勝ち取れたのは、この試合の一番のプラスの部分です」
東地区優勝を決めた千葉は、チャンピオンシップ初戦で昨シーズンのファイナルを戦った宇都宮ブレックスと対戦する。
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