NBA

文=神高尚 写真=Getty Images

スタッツを伸ばすことが予想される選手たち

NBAには『ファンタジーポイント』というスタッツがあります。得点、アシスト、リバウンドなど多くのスタッツをポイント化して個人の総合的な活躍度を示します。その目的は『ファンタジーゲーム』と呼ばれる、ファンがGMになった気持ちで選手を集め、優秀なチームを作ってポイントを競い合うゲームに利用するためです。

昨シーズン最も多くのポイントを稼いだのはアンソニー・デイビスでした。ラッセル・ウエストブルックやレブロン・ジェームズと違いアシストが少ないもののブロック数が多く、ターンオーバーも少ないことが大きく響きました。現在の指標だとインサイドプレイヤーが有利で、トップ10の中にはセンターが5人います。アンドレ・ドラモンドは得点が少ないのですが平均16本と圧倒的だったリバウンド力によって8位にランクインしています。

少し気が早いですが、プレシーズンゲームも始まったということで、新シーズンの『ファンタジーポイント』を予想してみましょう。上位陣でポイントを伸ばしそうなのはヤニス・アデトクンポ。毎年成長を続ける規格外のオールラウンダーは、ブルック・ロペスとアーサン・イリヤソバという3ポイントシュートを得意とするビッグマンが加入したことでインサイドでの役割が増えてきそうです。最後の砦としてのブロック、ディフェンスリバウンドから自らボールプッシュする速攻、自分にマークを引きつけてのアシストと、これまで以上にオールラウンドにスタッツを稼ぎそうです。

とはいえ、ファンタジーゲームは参加者が抽選で割り振られたドラフト順位で選手を指名していくので、上位陣は自分が希望する選手を指名できない可能性の方が高くなります。アデトクンポは遅くともドラフト5位までには指名されてしまうでしょうから、よほど運が良くないと自分のチームに組み込むことはできません。

そこで今回は昨シーズンのファンタジーポイントがもう少し下の順位から、スタッツを伸ばしそうな選手を探していきます。まずはすでに実力を証明しているものの、昨シーズンよりも堅実にスタッツを伸ばしそうな選手です。

スティーブン・アダムス(サンダー/53位)

昨シーズンはNBA全体で53番目にファンタジーポイントを稼いだセンターは、カーメロ・アンソニーの移籍によりオフェンスでの役割を増やすと予想されます。フィールドゴール成功率63%と高確率でシュートを決めた実績があります。ポストアップからの得点力も高く、インサイドの人数が減ったチーム事情もあって平均得点が上がるでしょう。

また開幕からウエストブルックが欠場する見込みのため、リバウンドでも確実にスタッツを伸ばしてきます。アダムスはオフェンスリバウンドが5.1本ながら、ディフェンスリバウンドが4.0本のみという珍しいセンターでした。リーグ9位の8.2本のディフェンスリバウンド数を誇ったウエストブルックの役割を他の選手が担うことは難しいので、インサイドの要が働くはず。アダムスの実力は既に証明済みで、得点やリバウンドを増やしても驚きはありませんが、個人スタッツで評価されるファンタジーゲームでは驚くほど評価を上げるかもしれません。

リッキー・ルビオ(ジャズ/71位)

稀代のゲームメイカーとして高く評価されているルビオですが、昨シーズン前半は移籍したジャズのシステムに戸惑いもあってアシストが少なく、余計なターンオーバーが目立ちました。周囲が予期せぬタイミングで出てくるルビオのパスに慣れていなかったこと、そしてチームとしてもゴードン・ヘイワードが抜けたことで戦い方が定まっていませんでした。

しかし、ドノバン・ミッチェルがエースとして台頭し、ケガ人が戻ってきた1月後半からルビオは同じプレータイムで得点、リバウンド、アシスト、ターンオーバーとすべての面で数字を改善させました。チームメートとシステムを理解して臨む新シーズンは、開幕から高水準の数字を残してくれるはずです。

この2人のようにプレーの質が向上するだけでなく、プレータイムが伸びるだけでもファンタジーポイントは増加します。カワイ・レナードやマイク・コンリーといったケガからの復帰を目指す選手だけでなく、オフに主力選手が移籍したチーム事情からプレータイムを増やしそうな選手にも注目です。

モンテロス・ハレル(クリッパーズ/178位)
昨シーズンわずか17分のプレータイムで11.0得点、4.0リバウンドを記録したハレルは、ブレイク・グリフィンに続き、デアンドレ・ジョーダンが移籍したクリッパーズのインサイドで中心になるでしょう。フィールドゴール成功率64%の走れるビッグマンは、スタッツが倍増する可能性を秘めており、ファンタジーポイントはトップ30に入ってくるかもしれません。最もジャンプアップが期待できる選手です。

デリック・ローズ(ティンバーウルブス/329位)
かつてのMVPはキャブスで苦手なコーナーからの3ポイントシュートを求められるなど、苦しいシーズンを過ごしましたが、2016-17シーズンはニックスで平均18点を記録しており、むしろ昨シーズンが悪すぎたと評価すべきでしょう。ベンチポイントの少なさはウルブズの問題点の一つであり、積極的にドライブしていく得意の形が機能しそうです。ジャマール・クロフォードが契約更新せず、さらにジミー・バトラーの収去も不透明なためスターターとしてプレータイムを大きく伸ばすかもしれません。ケガさえなければコンスタントにポイントを稼いでくれます。

他にも豊作だった昨シーズンのルーキーたちも2年目にスタッツを伸ばしてくるでしょうし、今年ドラフトされたばかりの未知数のルーキーを信じても面白いでしょう。最後にそこまで大きな期待をされてはおらず、プレータイムを得られるかどうかも確実ではありませんが、チャンスを掴めば一気にブレイクしそうな選手を選んでみました。

ウェイド・ボールドウィン(ブレイザーズ)
サマーリーグで素晴らしいプレーを披露したポイントガードは、広い視野とゲームメーク能力、シュート力を兼ね備えて、空席になったダミアン・リラードの控えとしてプレーするチャンスを虎視眈々と狙っています。リラードがチームを引っ張ったように、ポイントガードが得点に関与することが多いシステムであり、またベンチにシュート能力の高い選手が増えたため、チャンスさえ掴めばスタッツを稼ぐことができます。

シャキール・ハリソン(サンズ)
ポイントガードを探しているとされるサンズですが、交渉に進展がないのであれば、スターターの座を掴むかもしれないのがハリソンです。ディフェンスで貢献できるため、デビン・ブッカーとコンビを組む形はシーズンを通して定着するかもしれません。ライバルも多く、毎試合がサバイバルになりそうですが、狙ってみる価値のある状況です。

2ウェイ契約の制度ができたこともあり、未知の選手が活躍するようになったのもNBAの面白さを感じさせてくれます。昨シーズンもロイス・オニール(ジャズ)やトレイ・クレイグ(ナゲッツ)など、ドラフト外でシーズン途中に下部リーグから引き上げられながら、チームの中で重要な役割を果たす選手が登場しました。これからのブレークに期待して渡邊雄太もチームに加えておけば、活躍したときの喜びも倍増するはずです。