富樫勇樹

「まず1勝できたことで気持ち的に少し楽になります」

バスケットボール男子日本代表はワールドカップ予選Window2の初戦、チャイニーズ・タイペイ戦に76-71で勝利した。

第3クォーター終了時点で日本の4点ビハインドと、日本は追いかける時間が長く続いたが、最終クォーター開始2分半で11-5と走り逆転に成功した。そして、この大事な時間帯に活躍したのが富樫勇樹だった。富樫はこの試合で27得点と絶好調だった西田優大の3ポイントシュートをアシストすると、続くポゼッションではショットクロックわずかなところからステップバックの難しい3ポイントシュートをねじ込んだ。さらに次のポゼッションでも再びステップパックの3ポイントシュートを沈め、第2クォーター以来のリードを日本にもたらした。

その後、一度は同点に追いつかれた日本だったが、最後まで逆転を許さずに接戦を制した。富樫も「第4クォーターで逆転して勝利に繋ぐことができました。トム(ホーバス)さんになってからの初勝利は自信にしていいことだと思います」と話し、何よりも勝利という結果を出したことを収穫に挙げた。それはホーバス体制の初陣で中国に完敗を喫したことに起因する。

「トムさんの体制になって最初の試合でああいう負け方をしてしまって、すごくネガティブにとらえている方は多いと思うので、今までとはガラッと変わったメンバーで、まず1勝できたことで気持ち的に少し楽になります」

ホーバスコーチは、1勝がチームにとっても選手にとっても自信に繋がることを分かっていたからこそ、内容よりも結果を求めて必勝態勢で臨んだ。それはタイムシェアを徹底する方針のはずが、ルーク・エヴァンスと谷口大智が35分、そして西田優大が約34分と先発メンバーの3人にプレータイムが偏ったことからもうかがえる。

富樫勇樹

「チームとして良くならないといけないところはたくさんある」

しかし、勝ったとはいえ薄氷の勝利であり、決して満足の行く内容ではなかった。富樫も「40分間を通して、練習してきた自分たちのリズムではなかったと思う」と認めている。「トムさんのバスケットを練習してきて、まだ身体にすべてが染み込んでいるわけではないです。チームとして良くならないといけないところはたくさんあるんじゃないかなと思います」

こうした思いは、いずれ合流するであろう海外組など、先を見据えているからこそ出た言葉だ。「メンバーも変わって、海外組がいない中でもこうやって戦っていかないといけません。(開催国枠で)ワールドカップが決まっているとはいえ、しっかりチームを作っていかないと海外組が合流した時に戦えないと思うので、今いるBリーグのメンバーでこの大会をしっかり勝ち抜いていきたいです」

このように代表選手としての責任感を見せる富樫だが、それはキャプテンの大役を任されたことで生まれた一つの変化かもしれない。以前、ホーバスコーチは富樫のキャプテンシーについて「勉強中」と話していた。それはホーバスコーチが求めているラインにまだ達していないことを意味する。富樫は言う。「今まではあまり先頭に立って声を出すタイプではなかったんですけど、そこも一つステップアップしなきゃいけないとトムさんにずっと言われています。少しでも自分の殻を破っていけたらと思います」

富樫は約26分の出場で8得点5リバウンド4アシストを記録したが、フィールドゴール成功率は25%に留まった。明日のオーストラリア戦では数字面と味方を鼓舞するメンタル面の両方でステップアップし、さらなるインパクトを与えてほしい。