「2週間のキャンプですべてパーフェクトにいくとは思っていない」
バスケットボール男子日本代表は今週末にワールドカップ予選Window2を迎える。ヘッドコーチのトム・ホーバスを支える右腕、アソシエイトヘッドコーチを務めるコーリー・ゲインズが、昨日メディア会見に応じた。
ゲインズはロサンゼルス生まれの56歳。祖母が日本出身で、ミドルネームは『ヤスト』と日本にルーツがあり、現役時代には1997-98シーズンに日本リーグ時代のジャパンエナジー・グリフィンズでプレーしていた。ゲインズがヘッドコーチを務めていた時期のWNBAフェニックス・マーキュリーでホーバスがアシスタントコーチを一時的に務め、リオ五輪でホーバスがアシスタントコーチを務めていた女子日本代表にアドバイザリーコーチとして加わるなど、2人には深く長い関係がある。
そのためゲインズも「ずっと連絡を取り合っていて、自然と一緒に仕事する流れになりました」と、今回の就任の経緯を語った。現在日本はホーバス新ヘッドコーチの下、3ポイントシュートを多投しトランジションバスケを武器とする新たなスタイルに取り組んでいる。このスタイルはオフェンスの向上を生業としてきたゲインズの得意分野でもあると言い、ゲインズはNBAのトレンドも踏まえ、このスタイルの重要性をこのように話した。
「スペースを使って、外に広げてプレーするのが現代バスケの流れ。NBAでもインサイドにボールを預けてスコアできる選手が3人くらいと少なく、我々の強みを考えた時もインサイドを支配できる選手が今はいません。スペースを広く使って、ドライブの上手い選手にドライブスペースを作ることがストレッチ4や5の利点だと思っています。2点よりも3点のほうが効率が良く、データ目線で言っても、このスタイルが大事です」
戦術を変えたからといって、すぐに大きな成果が出るとは限らず、むしろ新たなスタイルに慣れるまでの時間を考えれば、思うような結果が出ないことのほうが多いだろう。特に代表のように活動時間が限られ、一から信頼関係を構築する場合はさらに時間を要する。ゲインズも「短期間で新しいグループや選手と関係を構築していくことは簡単ではありません。長いプロセスが必要で時間がかかるのは間違いないです。2週間のキャンプでいきなり素晴らしい関係が作られ、すべてパーフェクトにいくとは思っていません」と言う。
様々なカテゴリーを指導してきたゲインズだけに説得力のある言葉だが、決して良い組織の構築をあきらめているわけではない。「前回の中国戦も見ましたが、何をするにしても時間がかかると思いました。でもホーバスのやりたいバスケを理解しているし、やるためのツールはすべて揃っていると思っています」と、心強い言葉も発した。
「何かを成し遂げるためにアグレッシブな姿勢を持つことがすごく大事」
ホーバスコーチは男子代表の『文化』を変えたいと常々口にしている。選手には日の丸を背負う責任感を感じ、文字通り日本を代表する覚悟が求められる。ゲインズもそういったマインドセットが必要と強調し、文化を変えることがどういうことかを具体的に説明した。
「ゲームに対するスタイル面でのアプローチもそうですが、毎日コートに立つ時のマインドセットのアプローチが必要です。必ず一日の中で上達する。その日、どうやってバスケットボールと、自分と向き合うか。必ずベストを尽くして少しでも上達するという意思。常に攻撃的で、何かを成し遂げるためにアグレッシブな姿勢を持つことがすごく大事なのです」
ゲインズは女子日本代表の指導に携わった際に、こうした変化を実感した瞬間があったという。「確かオーストラリアとフレンドリーマッチをやる前後だったと思います。私は選手たちに変わったと伝えました。それまでは相手が何かをやったら自分たちが何かをやり返すという姿勢で受け身だった。でも、自分たちから攻撃的にプレーし、相手を狩りに行く、先んじてやっつけにいく変化を感じました」
女子日本代表を指揮したホーバスコーチは東京オリンピックで銀メダル獲得の快挙を成し遂げた。そして、今度は男子で同じようなことを達成しようとしている。ゲインズも「時間がかかるとは思いますが、絶対にできると思っています」と、ポジティブな姿勢を崩さない。ホーバスコーチの良き理解者であるゲインズのアソシエイトヘッドコーチ就任は男子日本代表が変わる速度をより加速させるはずだ。