デマー・デローザン

12年のNBAキャリアで磨いてきた能力を高度なレベルで発揮、MVP級の活躍

キャリアハイとなる平均28.1得点を記録するデマー・デローザンは、昨シーズンにプレーイン・トーナメントにも進めなかったブルズを、東カンファレンスの首位争いをするチームへと引き上げています。全くタイプが異なるニコラ・ブーチェビッチやザック・ラビーンとの相性の良さを感じさせながらも、これまでデローザンが歩んできたキャリアのすべてを表現するプレーぶりは、彼個人としての充実ぶりを感じさせます。

ラプターズ時代には相棒のカイル・ラウリーにプレーメークを任せ、エースとしてスコアリングに集中してきました。個人で点を取る能力を強みにオールスターの常連だったものの、ラプターズ時代で過ごした9年間でアシストが5を超えたのは最後のシーズンだけでした。2018年オフにトレードされたスパーズでは、ボールムーブを重視するチームスタイルに合わせてプレーメークを優先し、ドライブ能力を生かしてインサイドに侵入し、ディフェンスを引き付けてのアシストを増やしました。ターンオーバーを増やすことなく確実にシュートチャンスを作るデローザンの堅実性は役割を変えても際立っていました。

そしてブルズでは再びエースとして得点にフォーカスしており、パスを減らし、シュートを増やしています。ドライブでインサイドに収縮させてのパスよりも、自分で打ち切ることを優先するため、得意のミドルレンジでのシュート数は昨シーズンの5.4本から9.4本へと大きく伸び、平均10.4本打っていたこともあるラプターズ時代に戻ったかのように個人技を優先しています。

しかし、より特徴的なのはスパーズで磨いたアシスト能力かもしれません。ブーチェビッチやロンゾ・ボールがパスの中心となるブルズでは、チームで6番目の33.8本のパス数に留まっているものの、アシストはチームトップの5.1を記録しており、シュートを優先するプレースタイルに変化しながらも、的確なパス判断で決定機を演出してもいます。ラプターズ時代の特徴とスパーズ時代の特徴を見事に融合させたのが今シーズンのデローザンだと言えます。

また、ガードとしてプレーしていたラプターズ時代に対して、パワーフォワードで登録されることもあったスパーズでの経験が加わったことで、フィジカルのタフさが増しており、再びガードに戻ったブルズでは試合終盤でギアを上げられるだけのスタミナが特徴になっています。ハードワーカーが多いブルズではディフェンスの負担が少なく、オフェンスに集中できることでスタッツを伸ばしている一面もあります。

特に今シーズンは第4クォーターでの得点がリーグで最も多く、しかもフィールドゴール成功率は55%と試合を決めるメンタルの強さを見せています。勝負弱さを指摘されてきた過去からは考えられない変化ですが、これは単純にプレータイムの問題もあります。第1クォーターと第3クォーターに長く起用されるローテーションが多かったのが、ブルズではすべてのクォーターで平均的に出場しています。ブルズがチームとして第2クォーターと第4クォーターの得失点差がプラスになっているように、先行逃げ切り型のチームから、終盤に差し切るスタイルのチームに来たことで、デローザン自身も変化したといえそうです。

あまり器用なタイプに見えないデローザンですが、ラプターズ、スパーズ、ブルズそれぞれで求められる役割に応じて、自分のスタイルも変化させていることは、その順応性の高さを証明しています。キャリアの中で得た様々な経験をミックスさせ、見事にステップアップしたスタッツを残している反面で、プレーひとつひとつは従来と変わらないデローザンらしさに溢れています。一過性の好調ではなく、進化し続けてきたからこその活躍と言えそうです。