「どんな場面でも徹底して攻めて、決められるようになりたい」
バスケットボール女子日本代表はワールドカップ予選の2試合を終えた。カナダには劣勢を巻き返して延長戦の末の逆転勝ち。ボスニア・ヘルツェゴビナには終盤に逆転を許す力負けを喫しての1勝1敗。東京オリンピック後に新体制でスタートを切った日本代表にとっては、収穫も課題も多い大会となった。
中でも収穫が多かったのは、3×3日本代表でオリンピックを戦った後に5人制の代表に合流した馬瓜ステファニーと山本麻衣の2人が、3人制の経験を持ち込んで一気に主力へと成長したことだろう。
今日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦、山本は19分の出場で8得点。強気のドライブで果敢に攻める姿勢を評価され、カナダ戦に続いて終盤の勝負どころを任された。ただ、結果はフィールドゴール12本中2本成功と、スピードとスキルで相手をかわしたように見えても、相手のプレッシャーにシュート精度を狂わされた。「シュートを決めきることができませんでした。どんな場面でも徹底して攻めて、決められるようになりたい」と山本は反省を語る。
WNBAのスター選手、ジョンクェル・ジョーンズのプレッシャーは、3×3で多くの猛者と渡り合ってきた山本にとっても初めて経験するものだった。「全然違いましたね。2メートル近くあって(198cm)あれだけ動けて、ブロックに来ると分かっているので、来なくても気になってしまうので。みんなそれが気になっている中で、自分も決めきれませんでした」
ワールドカップ本大会では、ジョーンズのような選手と対戦する機会もあるだろう。ジョーンズに再び挑戦する場面もあるかもしれない。「あれだけの選手は初めてだったんですけど、これからは相手を想定してフィニッシュの精度に磨きをかけていきたい」と山本は言う。
「スピード勝負の中で、ただのスピードじゃなく良い判断をしていく」
実戦の場こそ2試合だったが、長い合宿で恩塚亨ヘッドコーチのバスケを学び、新しいチームメートと多くの時間を過ごしたことも、若い山本にとって良い経験となる。そこれ得た一番のものは「スピードをコントロールする部分」だそうだ。
「ただスピードで行くだけじゃなくて、自分の100あるスピードを上手く使って、80でも上手く使いこなせるように。そのスピードのコントロールはすごく学びがありました。スピードをコントロールすることで誰のディフェンスが寄ってきているのかとか見える範囲が広がります。スピード勝負の中で、ただのスピードじゃなく良い判断をしていく。それが恩塚さんのバスケでもあるので、学んでいきたいです」
まだまだ課題はあるが、5人制の日本代表にスムーズに馴染んでいることは、山本にとっては大きなステップアップだ。大会を通じて「自信を持ってプレーできました」と言う山本は、「恩塚さんも私を信じて使ってくれているので、コートに入ったら思い切ってやるだけです」と続ける。
東京オリンピックの後もチームが停滞せずに成長を続けていくには、山本のような若い才能がチームをかき回すことが必要だ。町田瑠唯が不在だった代表で山本がブレイクしたことは、チームにとって最高の刺激となる。今回得た収穫と課題は、山本にとってまた新たな成長の糧になるに違いない。ワールドカップに向けて、山本もチームもまだまだ良い意味での変化が求められる。