「悪い時に出た際にいかにその流れをこっちに持ってこれるか」
バスケットボール女子日本代表はワールドカップ予選の初戦となるカナダ戦で苦しみながらも逆転勝利を飾り、明日にはボスニア・ヘルツェゴビナと戦う。チームの大黒柱である髙田真希は「良いところも悪かったところも分かり、次に繋がるようなゲームができたと思います。ワールドカップのチケットを取らなきゃいけないので、どんなゲームでも勝ち切れたのは大きかった」と語る。
カナダ戦での髙田は約20分のプレータイムで5得点3リバウンド1アシストを記録。突出した数字を残したわけではないが、熟練のポジション取りや駆け引きで特にインサイドのディフェンス面で勝利に貢献した。
髙田は長らく女子日本代表を牽引してきた。東京オリンピックではキャプテンを務めてコート内外で存在感を示し、銀メダル獲得の快挙達成の中心にいた。そんな髙田だが、この試合ではベンチスタートに。所属するデンソーアイリスでも絶対的な主力である髙田がベンチからの出場となるのは珍しい光景だったが、本人は「そこまで意識はしていなかったです」と言い、さらに自身がベンチにいる意義をこのように語った。
「それこそリオ(オリンピック)の時もベンチスタートでしたし、自分の役割は経験上分かっているので、与えられたポジションをこなすだけだと思っています。なおかつ、自分がベンチにいることで安心感を持ってもらえたらうれしいです。流れが良い時もそうですけど、悪い時に出た際にいかにその流れをこっちに持ってこれるかが、このポジションの醍醐味と言うか面白いところだと思うので。そこは自分も理解しているので、その役割を果たしていきたいです」
エース級の実力を持つ選手をあえてシックスマンとして起用し、チームにアクセントを加えるという手法はNBAでも見られる。若手とベテラン組の融合をテーマに掲げる現在の日本のスタイルを考えれば、髙田のベンチ起用は最善の策なのかもしれない。実際に髙田は「コートに出た時に自分が感じたことをしっかり周りのメンバーに伝えながらアクションを起こしていけたらと思っていたので、その点はできたかなと思っています」とカナダ戦を振り返っている。
「今まで以上にアグレッシブにやれます」
髙田をベンチ起用できるのは、渡嘉敷来夢の代表復帰があってこそだ。193cmのサイズを誇る渡嘉敷の存在は世界と戦う上で大きな戦力となる。東京オリンピックを始め、渡嘉敷を欠いている時の日本は髙田を休ませる時間帯にダブルチームを多用し、高さの不利を埋めてきた。だが、現在は髙田と渡嘉敷が揃い、2人のどちらかが常にコートに立てるという状況となった。それはタイムシェアをする観点からも歓迎すべきこと髙田は言う。
「センターだけじゃなくどのポジションも目まぐるしく交代が行われるので、ベンチに下がってもまたすぐにフレッシュな気持ちでまたコートに立てます。そういった時間帯が必要ですし、フレッシュな身体でコートに立てるので、今まで以上にアグレッシブにやれます」
また、髙田は長らく代表でコンビを組んできた渡嘉敷の存在感をあらためて感じたと言う。「こういった試合では、必ず彼女の力が必要になります。頼もしいですし、それは1戦目であらためて感じたところがありました。周りの選手も彼女を見て、ついていかなきゃとか自分もやらなきゃという気持ちになれます。彼女がいるといないではチームに与える影響は違ってくると感じました」
その渡嘉敷は試合後の会見で「みんなとバスケットができて楽しかった」と語り、終始笑顔を見せていたが、彼女の表情が現在のチーム状況の良さを物語っていた。髙田はこれからも安心感をチームに与え続ける。