チームの中心から外れかかっていた選手たち、トレードが復調を呼ぶか
ウィザーズとマーベリックスとの間でトレードが成立した。ウィザーズはクリスタプス・ポルジンギスと2巡目指名権を、マブスはスペンサー・ディンウィディーとダービス・ベルターンスを獲得する。
ウィザーズとすれば、ブラッドリー・ビールが手首の手術で今シーズン終了となる中で、確たる戦力ではない2人を手放したことになる。ディンウィディーは右膝前十字靭帯の部分断裂から復帰したものの本来のパフォーマンスは取り戻せず、またビールとの連携構築に手間取っていた。ベルターンスは2020年のオフに5年の大型契約を結んだが、そこで成長がストップしてしまった。『ラトビアンレーザー』と呼ばれたリーグ屈指の3ポイントシュート能力は錆び付き、ディフェンスの脆さばかりが目立っていた。
マブスにとっても、ポルジンギスは扱いづらいタレントとなっていた。ルカ・ドンチッチがルーキー契約最終年の現段階では、ポルジンギスが一番の高給取りだが、こちらもNBAキャリア6年目で成長がストップ。昨夏の時点で戦力外と見なされつつあったが、新ヘッドコーチに就任したジェイソン・キッドがポルジンギスを重用することを決断。彼も期待に応えて高さと技術を駆使して活躍したのだが、ケガが多くコンスタントに良いプレーを続けることができなかった。ニックス時代の2018年2月に膝の靭帯断裂を負ってからケガ続きの彼は、今シーズンも55試合中34試合にしか出場できていない。
マブスにとっては、ドンチッチとポルジンギスの共存を断念したことで、エースのドンチッチを支えることに特化したチーム作りのスタートとなる。ディンウィディーはドンチッチからプレーメークとディフェンスの負担を軽減でき、ドンチッチをベンチで休ませる時間帯にオフェンスを託すこともできる。またポルジンギスがドンチッチと合わなかったのは、インサイドでもアウトサイドでも自由に動いてプレーしたいポルジンギスが、ドンチッチのスペースを潰してしまうから。ベルターンスがスポットシューターに徹すれば、ドンチッチの邪魔になることはない。むしろ必ずダブルチームを仕掛けられるドンチッチからのパスを受け、ワイドオープンで打てるチャンスは増えそうだ。ウィザーズでは先が見えない状況だっただけに、復活のきっかけとなるかもしれない。
ウィザーズは、ビールが今年オフの契約延長に踏み切るだけの強力なロスターを作る必要があり、ポルジンギスがそれに見合ったタレントかは現時点では疑わしいと言わざるを得ない。それでもポルジンギスをセンターで使うスモールラインナップを敷く、4番起用で外からのシュートを中心に狙わせるなど、モントレズ・ハレルを放出してもセンターとフォワードの層が厚いチームにおいて、ポルジンギスとの組み合わせで様々な戦い方のバリエーションが生まれそうだ。ただ、まずはコンディションを安定させるのが第一。今シーズン前半戦、試合に出ている時の彼のパフォーマンスは決して悪くなかっただけに、ケガをどう減らすかが問われる。
両チームともに、高給取りでありながらチームの中心からは外れかかっていた選手を交換する形となったが、移籍を機に彼らが本来の力を発揮すれば、非常に良いトレードになる。まずはチームにどうフィットするかに注目したい。