河村勇輝

河村「コートに入ってマッチアップした瞬間は『おおぅ!!』っていう感じ」

サンロッカーズ渋谷が2月2日、ホームで横浜ビー・コルセアーズと対戦。SR渋谷はジョシュ・ハレルソン、横浜はレジナルド・ベクトンとともにゴール下の番人を欠く中、ジェームズ・マイケル・マカドゥが20得点17リバウンド9アシストの活躍で攻守に渡って大暴れし、インサイドで主導権を握ったSR渋谷が99-84で勝利した。

SR渋谷が連敗を止めたこの一戦、大きな注目を集めたのは福岡第一高校で驚異的なスピードと爆発力を備えた強力バックコートを形成し、ウインターカップ連覇の立役者となった河村勇輝、小川麻斗の同級生対決だ。

高校卒業後、河村は東海大、小川は日本体育大に進学して迎えた大学2年目のシーズン、昨秋の関東大学リーグ戦で2人のマッチアップは実現している。だが、Bリーグの舞台では今回が初めての対戦だった。

第1クォーター途中からプレーしていた河村に対し、小川は第2クォーター開始時にコートインすると、河村のマークにつく。ボールプッシュする小川に対して、河村は前から激しくプレッシャーをかけるなど最初からエンジン全開で白熱の戦いを繰り広げる盟友対決だが、先手を取ったのは小川でパスフェイクから河村のマークを振り切り3ポイントシュートを沈める。だが、河村もその後で小川を1対1で抜き去ってのドライブでシューティングファウルを獲得とやり返した。

試合後の会見で、ともに「すごくうれしかったです」と語ったマッチアップだが、特別指定は今シーズンが3度目で横浜の主力選手として確固たる地位を築いている河村に対し、小川がこれまでにSR渋谷でプレーしたのは1試合のみだった。だからこそ、小川が横浜戦でプレーするかは不透明な部分は否めなかった。

ただ、小川の実力をよく知る河村にとっては、盟友が試合に出てくること自体は想定の範囲内で「大学でもマッチアップしていますし、プロでもいずれかはマッチアップすると思っていたのでそんなに驚きはなかったです」と振り返る。

とはいえ、第2クォーター頭からのタイミングについては「特に意識しているわけではなかったですが、コートに入ってマッチアップした瞬間は、『おおぅ!!』っていう感じでした」と若干、予想外なところもあったようだ。

一方、小川にとっては心身ともに十分な準備ができての対決だった。「昨日の練習終わりに、ムーさん(伊佐勉ヘッドコーチ)から『マッチアップさせたい』と言われ2人で話していました。自分は河村と高校からやっているので、癖はなんとなく分かっていますけど、高校の時からレベルアップしているので、秋田戦などのビデオを見たりして準備をしていました」

そして河村と同じく試合中はいかにチームの勝利に貢献するかに集中してプレーしているからこそ、「あまり意識はしていませんでした」とマッチアップを語る。ただ、同時に「負けたくない気持ちは強かったです」と熱い気持ちを胸に秘めていた。

河村勇輝

昨シーズンから得点とアシストでほぼ倍の数字を記録している河村

最終的に河村は、13得点5リバウンド2アシストを記録。3度目のBリーグ挑戦は、ここまで9試合を終え1試合平均11.2得点、6.4アシスト、3.0リバウンド、1.6スティールと見事なスタッツを残している。

その中でも注目したいのはシュートの内訳で、今シーズンはここまでゴール下へのドライブからのレイアップ、シューティングファウルを獲得してのフリースローの得点が目立つ。昨シーズンの河村は同じ横浜でプレーし、出場時間は約20分と今シーズンとほぼ同じだが、平均6.0得点、3.4アシスト、2.3リバウンド、1.6スティールに留まった。

得点が伸びなかった要因として、フィールドゴール全体の6割以上を放っていた3ポイントシュート成功率が20.5%と低調だったことが大きい。一方、今シーズンも現在3ポイントシュート成功率は25.0%に留まっているが、フィールドゴール全体に占める割合は31.7%と低い。2点シュートの成功率は60%を越え、さらに1試合平均4.5本と多くのフリースローを放っている。

河村はこの変化を次のように語る。「ドライブしていってからの得点が増えてきて、すごく自分の中で強みにしています。ビーコルはシューターが多いので、チームにとってもドライブからの得点、キックアウトのパスが必要と思っていて、それが自分の役割だと意識しています」

言うまでもなく本人は、外からの精度を改善していきたいと思っている。ただ、大学とは比べものにならいサイズ、フィジカルを備えた外国籍ビッグマンがいるBリーグで、こうしてインサイドで得点をコンスタントに挙げているのは見事で、確かな成長の跡をコートで披露している。

小川麻斗

小川「シンプルにやることを意識したい」

小川は河村のような主力待遇ではないが、今回10分33秒の出場で5得点をマーク。「ポイントガードとして出していますが、得点能力に長けているので『コントロールはしなくていい。ボールを運び、ハーフコートになったらどんどん点を取りにいくように』と伝えています」と語る伊佐ヘッドコーチの期待に応えるプレーを見せた。

小川本人もゲームメークの部分を自分の課題と考えているが、今はアグレッシブに仕掛けていくことを重視している。「持ち味は得点能力ですが、チームが良くない時にどれだけコントロールできるかは渋谷にきて学ばないといけないところです。ただ、コントロールを意識しすぎると、自分の強みをあまり出せないです。ボールをもらったらしっかりリングを見る。相手が寄って来たらアシストと、シンプルにやることを意識したいと思います」

伊佐ヘッドコーチは「河村君とマッチアップさせたらBリーグも盛り上がる。福岡第一の井手口(孝)先生も喜ぶのではと思っていました」と語ったが、Bリーグで初の直接対決は切れ味鋭いドライブの河村、思い切りのよい外角シュートの小川と、お互いに自分の持ち味をしっかり出し観客を沸かせた。

この2人だからこそ紡いでいける唯一無二のライバルストーリーは間違いなく存在し、これからも見るものをワクワクさせてくれる。その思いをさらに強くする今回のマッチアップだった。