ダリアス・ガーランド

スリービッグマンの特長を引き出し、自らも大活躍を続ける

昨シーズンに24.3得点を記録したコリン・セクストンが開幕早々に離脱しながら、7勝4敗と開幕ダッシュに成功したキャブズですが、当初はルール変更やボール問題が起きている中で発生した一時的な好調にすぎないと周囲からは見られていました。その後も、ディフェンス力をベースに接戦を勝ち切る試合運びの上手さで、勝ち星を先行させていったのは驚きでしたが、見事なゲームメークを見せていたリッキー・ルビオまでが離脱すると、さすがに下降していき、12月末には20勝16敗と勝率5割のラインが見えてきてしまいました。

ところが1月に入って11勝4敗と持ち直し、今シーズン最大のサプライズチームになっています。

中心となるガード2人がケガで離脱している中で、ダリウス・ガーランドが得点とアシストでチームハイを記録し、エースとしても、ゲームメーカーとしてもオールスター選出に相応しいパフォーマンスで、チームを強力に牽引しています。近年のNBAでは珍しいビッグマン中心の選手構成で戦うキャブズだけに、ポイントガードとしてのガーランドの重要性は非常に高くなっています。

ジャレット・アレン、ラウリ・マルカネン、ケビン・ラブ、そしてルーキーのエバン・モブリーのうち3人を同時にコートに送り出すスリービッグマン体勢は、スモールラインナップ全盛の現代では異質です。しかし、全員が抜かれることを怖がらずにアウトサイドまで追いかけるディフェンスを見せ、同時に分厚いインサイドカバーで蓋をしてきます。ファールの数がリーグで最も少なく、スピードはなくても堅実なディフェンスがチーム最大の武器になっています。

その一方でオフェンスではスピードとプレーメークが足りず、そこを一手に引き受けて構築するのがガーランドです。常にどこかで高さのミスマッチが生まれるのを見逃さず、インサイドにポジションを取ったチームメートにボールを供給していくガーランドのパスは、魔法のようなパススキルではないものの、ペイント内を攻めるキャブズの堅実さを示すスキルであり、視野の広さでコート全体を巧みに使っています。

パスを出した後のガーランドは、185cmという小柄で俊敏な特徴を生かしてオフボールで動き回ることで、ビッグマンだらけのキャブズにスピードをもたらします。チーム全体としてはポジションを守る意識が強いものの、それが逆にガーランドが動き回るスペースを明確にしており、またスクリーナーも多いことからディフェンスを混乱に陥れます。足を止めてディフェンダーと対峙する1on1ではなく、ディフェンス全体を大きく動かしてから切れ込むガーランドのドライブは非常に止めにくく、シュート力も高いため、止めるのが困難な選手になってきました。

3年目で大きく飛躍したガーランドはオフに契約延長が可能となります。今回のオールスターに選出されるであろうガーランドにキャブズがどのようなオファーを提示するか注目されますが、昨オフに満足するオファーを提示されなかったセクストンも同時に契約延長の交渉があります。ルーキー時代から巧みなプレーメークをしていたガーランドですが、今シーズンはセクストン不在が彼に自由とスペースを与えることになったからこそ、今の活躍があるとも考えられます。

セクストンとガーランドのコンビを中心にチーム作りしてきたキャブズですが、ガーランドとビッグマンが噛み合うことで今までにない好調ぶりを続けているだけに、セクストンとのコンビを優先するのか、それともガーランド中心に切り替えるのか、キャブズにとって未来を分ける決断が必要になりそうです。