「これが道端での出来事だったらタダじゃ済まない」
現地1月27日に行われたレイカーズvsセブンティシクサーズの一戦は、ジョエル・エンビードが26得点9リバウンド7アシスト、トバイアス・ハリスが23得点、タイリース・マクシーが14得点7リバウンド10アシストを記録し、ホームのシクサーズが105-87で快勝した。
レイカーズは、左膝を痛めたレブロン・ジェームズの負傷欠場の影響が大きく、第1クォーター終盤からずっとビハインドを背負っての完敗。これで24勝25敗となり、またも勝率5割を切った。
この試合では、第4クォーターにレイカーズのカーメロ・アンソニーとコートサイドで観戦していたシクサーズファンが口論になる場面があった。コートサイドの席で観戦していた2人のファンから人種差別的な言葉を浴びせ続けられたカーメロが我慢の限界に達して客席に向かい、審判に制止された。会場の警備員も駆けつけ、問題発言をした2人のファンが退席したことで、試合は再開された。
カーメロは試合後の会見で「受け入れられない言葉だった」と説明。フィラデルフィアは熱狂的なファンが多い都市として知られるが、越えてはいけない一線を越えた発言にカーメロも黙ってはいられなかった。
「ファンの野次、トラッシュトークは構わない。でも、一線を越えてきたら、一人の男として今日のように対応する。我慢してプレーすることもあるし、野次の中でプレーするのも試合の醍醐味ではある。プロで20年近くやってきて、この街のファンがどういうタイプなのかも知っている。ただ、どんなスポーツイベントであっても、言ってはいけないことがある。これが道端を歩いている時で、肩がぶつかって同じことを言われたら、タダじゃ済まない」
レイカーズ指揮官のフランク・ボーゲルは「受け入れられないファンの言動だった。厳格な基準があるべきで、リーグに適切な対応を求める」とコメント。問題発言をしたファンが退席した後で別のファンとも口論になったカーメロを抑えたシクサーズのエンビードは「とにかく状況を落ち着かせたかった」と話している。
NBAは人種差別を許さない姿勢を表明しているプロスポーツリーグだ。2020年には警察官の暴行により黒人男性のジョージ・フロイド氏が死亡する事件が発生し、同年の夏にもウィスコンシン州ケノーシャの警官が、同じく黒人男性のジェイコブ・ブレイク氏に向けて背中から7発の銃弾を撃ち込む事件が発生。さらに、ケノーシャでの抗議活動中に白人少年が銃を発砲して2人を殺害する事件が続き、大事なプレーオフ期間中だったにもかかわらず、この事態を重く受け止めたバックスの選手たちが社会問題に対する抗議を理由に試合をボイコットする騒動にまで発展した。その後もNBAは、各種の活動を通して社会正義の実現を訴え続けている。
ライブスポーツの試合を盛り上げるアクセントになる野次なら許容されても、そこに差別的な表現が含まれれば完全にアウト。リーグとシクサーズの対応に注目したい。