スペイン代表

年齢層の高いチームで、NBAドラフト注目株のプレーにも注目

2019年のワールドカップで優勝した現時点での『世界最強チーム』であるスペインは、初めての金メダル獲得に向けてさいたまスーパーアリーナに乗り込みます。数々の国際舞台で勝利を収めてきたスペインの黄金世代の始まりは、2006年に同じ会場で行われたワールドカップの優勝から始まりました。その大会でMVPに選ばれたパウ・ガソルは、オリンピックでは銀メダル2回、銅メダル1回でアメリカの壁に跳ね返され続けてきました。41歳で迎えるオリンピックで黄金世代に残された最後のミッションに挑んできます。

パウとマルクのガソル兄弟に加え、ルディ・フェルナンデスとセルヒオ・ロドリゲスが2006年のワールドカップから、さらにリッキー・ルビオが2008年のオリンピックから中心選手として活躍し続けており、年齢層の高さは気になるものの、抜群のチームオフェンスを構築します。

現役のNBAプレーヤーの多いチームですが、NBAから国内リーグに戻ってプレーしている選手も多く、一度は引退したパウも2月からバルセロナでプレーしています。国内リーグはレベルが高く、特に国際ルールにおけるチーム戦術ではアメリカの上を行くため、オフェンスシステムの流行系がスペインから生まれてNBAに導入されることも珍しくありません。求められるスキルや戦術力の違いもあって、一般的なネームバリューと国際舞台でのプレーレベルは一致しないことも多く発生します。

チームの中心となるルビオはポストアップとカットプレーが組み合わさったスペインのオフェンスにおいては、『世界最高のポイントガード』として、NBAの彼よりも輝きを増します。ティンバーウルブズでの今シーズンは判断の悪いプレーが多く、シュート力の低さもあって低調なプレーが続いていましたが、代表では直前のエキシビションマッチで別人のようなプレーを見せ、見事にチームを牽引していました。控えのロドリゲスやセルヒオ・リュリもハイレベルで、そのゲームメーク能力はスペイン最大の強みです。

インサイドはマルクやビリー・エルナンゴメスのポストプレーがあり、さらにサイズのあるウイングがアウトサイドからも決めてきます。チームとしては機能性の高い見事なオフェンスを構築してきますが、若干の不安が残るのは、得点力の高いエース格が不足していることと、平均年齢が高くトランジションの連続に持ち込まれると弱みを見せることで、アメリカとのエキシビションマッチでは後半に走られるとパワーで押し切られてしまいました。

その試合でアメリカのNBAプレイヤーを上回る反応の速さを見せたのが、大会期間中に行われるドラフトで指名候補になっている19歳のウスマン・ガルバでした。スペインが優勝するためにはガルバのような若いエネルギーを大会の中で上手く融合していく必要があるかもしれません。

日本にとって初戦の相手となりますが、一気にラッシュしてくるタイプのチームではないため、試合序盤に落ち着いて対処すれば一方的な展開にはならないはずです。ただ、ワンプレーの精度は高く、同じペースで試合をしていても徐々に力の差が出るはず。チャンスをつかんだ瞬間に速い展開に持ち込むのが日本にとって理想的な試合運びになります。世界最高レベルのゲームコントロールをどうやって乱していくのか、その対応は金メダルを目指すスペインにとっても重要な課題で、初戦の戦いぶりは注目されます。