プレーオフ進出が途切れ再建期を迎えたグリズリーズに
グリズリーズが渡邊雄太と2年間の2ウェイ契約を結ぶことが明らかになった。
この春にジョージ・ワシントン大を卒業した渡邊は、ネッツの一員としてサマーリーグでプレーし、ミスマッチを作らせないディフェンス、プレー選択の良さとリーダーシップ、3ポイントシュートといった長所を披露。今回の契約につながった。
2ウェイ契約とはNBAとその下部リーグ(Gリーグ)の両方に出場できるもので、昨夏から導入された制度。ロスター枠を圧迫せずに若い選手を2人まで支配下に置くことができる、チームにとって使い勝手の良い契約。同時にチャンスを求める若手にとっても有益で、昨シーズンもここからチャンスを得て飛躍した選手がいた。
たとえば名門デューク大で4年間プレーしたクイン・クックは、ドラフトで指名されることはなくGリーグでプレーしつつマーベリックス、ペリカンズで短期間NBAでプレーしていた選手。それでも昨シーズンにウォリアーズと2ウェイ契約を結ぶと、ステフィン・カリーのケガによりトップチームでの出場機会を与えられ、シーズン終盤には2年間の本契約を勝ち取っている。
渡邊は2ウェイ契約とはいえNBA球団であるグリズリーズ保有の『NBA選手』となり、NBAデビューに大きく近づいたことになる。とはいえ、2ウェイ契約がNBAに直結するわけではなく、プレー機会を得られないまま契約を打ち切られるケースもあり、まだまだ越えなければいけないハードルは多い。また、グリズリーズの支配下に置かれるため、この契約があるうちは他のチームでプレーするチャンスはない。
昨シーズンのグリズリーズは22勝60敗。前年の43勝39敗から大きく後退、激戦の西カンファレンスで下から2番目の成績に終わり、7シーズン続いていたプレーオフ進出も途切れた。チームは再建段階に入り、このオフに大きな変革を求められている。
サマーリーグを終えて現在は一時帰国中の渡邊は、次はグリズリーズのトレーニングキャンプに参加する。ここでのアピール次第で開幕後の扱いも大きく変わることになりそうだ。グリズリーズの開幕ロスターに入ることができるかは、渡邊の実力よりもチームの状況に左右される部分が大きい。おそらくはグリズリーズのGリーグチームであるメンフィス・ハッスルが主戦場としてプレーしながらチャンスを待つことになるだろうが、コールアップのチャンスを広げる意味ではトレーニングキャンプで首脳陣に良い印象を与えておくことが大事。『試される機会』はまだまだ続くが、夢の実現に力強く前進していることは間違いない。