減量、フォーム改善、呼吸法により長年の課題を解消
9勝3敗と好調なピストンズ。チームを引っ張っているのはアンドレ・ドラモンドだ。今シーズン開幕を前に、彼は長年の弱点であるフリースローの改善に取り組んだ。これまで年間のフリースロー成功率が42%を超えたことがなく、昨シーズンはNBAワーストの35.5%を記録。『フリースローが下手なビッグマン』の典型と見なされてきた。
だが、そのドラモンドが弱点を克服した。今シーズンのドラモンドは、開幕から11試合を終えて、成功率63.8%を記録。47投で30本の成功は、平均値よりはまだまだ低いものの、ドラモンドとしては驚異的な数字だ。11月3日に行なわれたバックス戦では、なんと16本中14本も成功させた。
センターとしての能力はNBAトップクラスながら、明らかな弱点を抱えていたドラモンドに何が起こったのだろうか。昨シーズン終了後、彼はNBAデビュー以前に練習をサポートしていたトレーナーのアイダン・ラビンに連絡を取った。アイダンとの猛練習のおかげで、ドラモンドは約14kgもの減量に成功。「アスリートはまず肉体の鍛錬から始め、それからメンタルを鍛えるべき」というのがラビンの考え。フリースロー改善の第一歩はシェイプアップだった。
昨シーズンまで、故意にフリースロー成功率が低い選手にファウルを仕掛けてプレーを止める『ハック戦術』の犠牲になってきたドラモンドが大きく変えたのは2つ。1つ目は、フリースローを打つ前のルーティンだ。リムをしっかりと見つめ、深呼吸してからフリースローを放っている。そしてもう1つの変化はフォームにある。昨シーズンまでと違い、今シーズンは上半身が床と平行になるほど前傾した姿勢から動き始めてフリースローを放っている。
集中力維持にはヨガの呼吸法が一役買っている。「簡単なヨガの呼吸法をフリースローを打つ前にやることで、身体全体をリラックスさせるんだ。フリースローはメンタルの部分が大きい。もし失投しても、今ではポジティブに考えられる。ルーティンを維持することが大事だね」
過去、ピストンズはドラモンドのフリースローを改善させようと様々なアイデアを試したが、何一つ機能しなかった。減量と呼吸法、フォームの変更はシンプルな手段だが、ドラモンドはオフに膨大な時間を費やしてこれをやり通した。
まだ不安定な試合があるとはいえ、これでヘッドコーチのスタン・バン・ガンディも、試合終盤にドラモンドをベンチに下げなくて済むようになった。これまでは僅差の試合展開であっても、『ハック戦術』の対象になってしまう都合上、どうしてもドラモンドを交代させないといけなかった。最大の弱点が改善された影響は、9勝3敗という成績を見れば一目瞭然だ。
フリースローという明確な課題が改善できたことで、ドラモンドのパフォーマンス自体も向上している。バックス戦では16得点20リバウンド7アシストを記録してチームを4連勝に導いた。7アシストはキャリアハイの数字だ。
NBAトップクラスの選手には、抜群の身体能力が備わっているもの。あとは、それを引き出すためのメンタルコントロールが重要になる。それができれば、誰でもドラモンドのように能力を開花させられるのかもしれない。長らく続いたドラモンドのフリースロー問題も、ようやく決着の時を迎えようとしている。
We got the job done.#Pistons Playback crafted by @flagstar has your highlights from the win over the Hawks. #DetroitBasketball pic.twitter.com/efkaDBJelS
— Detroit Pistons (@DetroitPistons) 2017年11月11日