新リーグ発足に向け、ドラフトの是非も問われた2015年
まもなくドラフト会議がやって来る。各メディアはそれぞれのスカウティングレポートを披露しながら有望な選手を紹介し、指名順位を予想する──というのは、清宮幸太郎の動向が注目されるプロ野球の話だ。
バスケットボールの新リーグ発足へ向け、試行錯誤していた2015年。袂を分かつ2リーグの各クラブオーナーを一堂に集めて行われた会議では、ドラフト制度の是非も一つの議題としてあがった。潤沢な資金力あるクラブが有利に選手を獲得できてしまうという懸念の声も聞こえていた。話し合いとともに当時の川淵三郎チェアマンの英断もあり、ドラフトによる戦力均衡ではなく、昇降格によって競争を促す3部制が選択された。当面はドラフトを行わず、自由競争で始まったのがBリーグである。
年々入れ替わる3部制になったことでドラフトの実現は難しくもなった。仮にウェーバー制が導入され、B3から優先権があったとしてもB1との運営基盤が全く違い、選手にとっては貧乏くじを引くことになる。逆にB1だけで行ってしまうと、B2以下のクラブは戦力補強から差がつき、いつになっても昇格できない状況が生じてしまいかねない。
だがそれ以前に、ドラフト相応の逸材が揃っていると胸を張って言えないのがバスケ界の残念な現状である。サッカーに匹敵するほどの競技人口を誇ってはいるが、それに比例するだけのタレントは出てきていない。さらにB1だけで18クラブもあり、3部まで含めれば45クラブの大所帯リーグであり、そのすべてをまかなえるだけの有望な新人確保は難しい。ドラフトを先送りしたのは正解だったと一人のファンとして思うとともに、それを浮き彫りにしていたのが先人のbjリーグである。
果敢にトライした先人、bjリーグのドラフト事情
最終的には24クラブまで膨れあがったbjリーグでは、2005年に産声を上げた時から11年間、ドラフトを採用してきた。初年度は6クラブすべてがドラフトで選手を指名している。当たり前のことだが、その後の歴史をたどっていくと別の現実に直面する。2クラブが増えた2年目だったが、ドラフト参加は5クラブと早々に減少している。3年目に至っては10クラブ中3クラブしか指名を行わない。
そんなドラフトが盛り上がるわけもない。初年度こそ六本木ヴェルファーレで華々しく始まったが、気付けば普通の会議室で行われるようになり、どんどん簡素化されていった。
A契約と呼ばれるドラフト指名選手には、最低年俸300万円を保証しなければならない。高いか低いかは別として、それがクラブにとってはハードルとなり、積極的に参加しなくなった要因として挙げられる。ドラフトで指名するような選手が年々増え続けるクラブの数に比例していなかったことも要因の一つだった。当時、大学でトップクラスの選手たちはbjリーグではなく、NBL(JBL)または就職できる実業団リーグの門を叩いていた。
2008年、当時のJBLから移籍した浜松・東三河フェニックス(現・三遠ネオフェニックス)はすでに選手層が厚かったこともあり、最初の年からドラフトには参加していない。翌2009年には優勝し、ますますドラフトの意義が薄れていった。
2009年より導入された育成ドラフトで指名する選手に限り、最低年俸保証300万円の壁が取り外された。これにより、2011年は19クラブ中11クラブがドラフトで選手を獲得している。だが、選手側に立てばさらに厳しい状況を強いられ、ひっ迫するクラブ経営が表面化したと言える。一方、育成ドラフトからプロ選手となった山本エドワード(島根スサノオマジック)や佐藤優樹(新潟アルビレックスBB)は今でもドラフトされたクラブで活躍を続けている。彼らがプロになる夢を叶えられたのは、この制度のおかげと考えることもできる。
2012年よりアーリーエントリー制度が始まり、シーズン中から選手と直接交渉できるシステムが採用されたことで、事実上のドラフト崩壊となった。ラストシーズンまでドラフトは続いたが、運営面での勝ち組であった浜松・東三河フェニックスや琉球ゴールデンキングス、秋田ノーザンハピネッツ、大阪エヴェッサは『一本釣り』できるアーリーエントリーで積極的に選手を確保していく。結局、bjリーグを通してドラフトの歴史を振り返れば、全クラブが選手を指名したのは後にも先にも初年度だけに終わっている。
ドラフトよりも、選手を探す役職の確立が先
これまでは先が見えず、卒業後にバスケットを離れる選手が多かったが、Bリーグができたことで若い逸材は増えていくと期待している。それに先駆け、プロ野球のスカウトのように積極的に選手を探す役割の確立が必要だ。大学日本一を決めるインカレ時期になると各クラブのヘッドコーチが自ら会場へ足を運び、選手を吟味する光景がこれまでも見られてきた。しかし、Bリーグとなった今ではその時間を割くのも難しい。本来、その役割を担うのはスカウトであり、GMである。クラブの強化方針と現状の戦力を照らし合わせながら、予算内でいかに良い買い物をするかが手腕の見せどころとなるこの役職が足りていない。
戦力均衡によるリーグの活性化のためには、ドラフトが最善の手段と考えられてきた。しかし、今年のプロ野球を見れば、首位から最下位まで6球団しかないにもかかわらず、セ・パともに40ゲーム前後の差が付いてしまった。昨シーズンのNBAも東地区は33ゲーム差、西地区は43ゲーム差と大きく溝が開いている。
そしてBリーグに目を転じれば、ドラフトを行っていなくても、今のところ2年目のシーズンは混戦状態となっており、戦力均衡が保たれていると言っていいだろう。ただ、資金力の格差は確実に存在しており、これからの動向に注視していきたい。
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