菅澤紀行

「結果を残さないとプロとしてやっている意味がない」

10月16日、富山グラウジーズは敵地で川崎ブレイブサンダースに73-69で勝利。前の試合で大黒柱のジョシュア・スミスが右膝蓋腱断裂の大ケガを負って長期戦線離脱となり、ジョシュ・ペッパーズも故障欠場のため外国籍選手一人のみとサイズ面で圧倒的な不利がある中、開幕4連勝中の川崎を撃破した。

この試合、富山は第1クォーター途中、川崎のゴール下を止められず9点を追いかける展開となるが、終了間際の連続得点で21-25まで縮める。第2クォーターに入るとスミスが不在であってもダブルチームやトラップを積極的に仕掛ける攻撃的なディフェンスで川崎にタフショット打たせ、このクォーターで17-8と圧倒し、逆転して前半を終える。

後半に入るとホームで負けられない川崎も反撃を開始。第3クォーター残り2分15秒に51-51と追いつかれた後は、一進一退の攻防が続く。その中でも富山は、外国籍選手がレオ・ライオンズのみのため、全員が高いボールへの執着心を見せリバウンド争いで優位に立つ。

象徴的だったのが、第4クォーター残り5分からのオフェンスで2度オフェンスリバウンドを取った末に葛原大智が3ポイントシュートを沈めて7点にリードを広げた場面。残り1分20秒には3点差と再び詰め寄られたが、残り1分に菅澤紀行が3ポイントシュートを決め、粘る川崎を振り切った。

富山グラウジーズ

「リバウンドは、個人ではなくチームで取ったもの」

この勝利を決定づけた一撃を含む、3本の3ポイントシュートを決めた菅澤はこう振り返る。「外国籍選手一人で、客観的には負け試合と見られる状況でした。でも、富山のチームメートは誰一人そう思っていなかった。全員がチャレンジしようと高いモチベーションを持って40分間チーム一丸となって戦えました。やってやったぞと高揚感があり、うれしいです」

そして大きな勝因となったリバウンドで争いに勝てた理由を「リバウンドは、個人ではなくチームで取ったもの。普段だったらジョシュ、レオに任せてしまうところもありました。それが今は日本人が絶対に取らないと、相手に取られてしまう。身長と幅では勝てない。だからこそ人数をかけて取りに行くことが必要で、それを40分間ずっとできました」と分析する。

シーズン開幕の時点で菅澤はインサイドの控え要員であり、1試合数分のプレータイムが与えられるかどうかの立ち位置にあった。その状況からこの試合では約20分出場で10得点3リバウンドを記録。普段あまり出番がない中、いきなりのチャンスですぐに結果を出すのは簡単なことではないが、菅澤の場合はしっかりした裏付けがあった。

「僕の富山でのポジションは、3番、4番の誰かがケガをしたり、調子が悪かったりした時のバックアップです。今日はまさに自分が出なければいけない状況でした。もちろんチームとして戦いますが、ここで一選手として結果を残さないとプロとしてやっている意味がない。常日頃からこういう状況を意識してやってきたので気負うことなく、いつも通りのプレーをする準備はできていました」

だからこそ、3本の3ポイントシュートも菅澤にとっては、「シュートが入ったことはうれしいです」と語るとともに、いつものプレーを遂行しただけだった。「日頃から(宇都)直輝、阿部(友和)さん、レオと、パスを供給してくれる人がいます。あそこでシュートを打ち切らないと逆にチームプレーにならない。これは練習からずっとやっているので普段できていることがコートで出せました」

富山グラウジーズ

指揮官ベック「ジョシュアがいなくても戦えることを示せた」

試合後、富山の指揮官ドナルド・ベックが、この1勝がもたらす価値の大きさを次のように語った。「ベンチから出てきた選手もステップアップしてくれた。チームディフェンスはシーズンで一番良かった。富山は個性豊かな選手たちがミックスされているチームで、ジョシュアがいなくても戦えることを示せた」

ペッパーズも故障中であり、これからも富山にとってはしばらく外国籍選手の部分で苦しい時期が続くことは予想される。今週末は帰化選手アイラ・ブラウンと外国籍選手2人を同時起用する実質オン3を多用する大阪エヴェッサと激突。さらに23日はシーホース三河、26日と27日は宇都宮ブレックスと、ゴール下でタフな相手との試合が続く。

しかし、「チーム全員が言葉をかけあって前を向いて40分間、戦うことができたことにつきます」と菅澤が語るこの試合のようなプレーを続けることができれば、富山は十分に戦っていける力を持っている。

10月16日のB1 9試合の結果
秋田65-60A東京
千葉69-76宇都宮
SR渋谷83-76北海道
三遠71-80横浜
三河93-74新潟
大阪59-90京都
島根61-78滋賀
川崎69-73富山
琉球83-73名古屋D

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