「今後のトーナメントに向けてプラスになる」
『FIBA女子アジアカップ2025』に出場中のバスケットボール女子日本代表は、昨日グループフェーズを終えた。レバノン、フィリピンに勝利するもオーストラリア代表に敗れ、グループ2位で明後日からの決勝トーナメントに臨む。
今大会は女子日本代表チームにとって、コーリー・ゲインズ体制になってから初のFIBA国際大会。5月に始動したばかりのチームは当然ながらまだまだ連携が発展途上だ。レバノン戦、フィリピン戦と、自分たちのやるべきプレーを遂行できないもどかしい展開が続いていたが、昨日のオーストラリア戦は敗れたとはいえ、内容的には今大会ベストの内容で、明るい兆しが見えてきた。
ベテランセンターの渡嘉敷来夢はオーストラリア戦後、次のように手応えと反省を語った。「このバスケが日本の求めているバスケだと思います。ただ、今になって出ているようでは遅いですし、もう少し早い段階で出せていたら今日の結果も変わっていたのかなと。それでもデンマークとの強化試合から続いた良くない内容を少し打開できたのは、今後のトーナメントに向けてプラスになるかなと思います」
渡嘉敷はオーストラリア戦で、サイズのある相手ビッグマンに対して身体を張ったディフェンスを披露。さらにスイッチでガードとの『スピードのミスマッチ』を何度も作られたものの、粘り強いディフェンスで対応する姿勢が光った。そしてオフェンスでは、3ポイントシュート3本中2本成功を含む8得点を挙げた。
インサイドを主戦場とする渡嘉敷が外から決め切ったことは、日本の生命線である3ポイントシュートの破壊力アップに繋がるポシティブなものだ。だが一方で渡嘉敷は今大会ここまで、一番の強みであるゴール下での得点が皆無などころか、そもそもゴール下でパスをもらえてすらいなかった。
自分の思うようなプレーができない逆境の中、それでも渡嘉敷は腐ることなくチームのために何がベストなのか模索し、それが3ポイントシュート2本成功へと繋がった。
「外で打てる部分はポジティブにとらえたいです」
渡嘉敷は次のような葛藤を経てオーストラリア戦に臨んだと明かす。
「最初の2試合、インサイドでパスをもらえませんでした。『インサイドでボールをもらって得点を狙っていくという考えが古いのかな』と、昨日の夜にめちゃくちゃ考えました。ミスマッチになったらゴール下で身体を張ることで、ファウルを取れていたのは良かったです。ただ、『やっぱり自分が変わらないといけない』と気持ちを切り替えて、外で待ってみようと思ったのが今日でした。あとは自信を持って打つだけで、それがちょっとプラスになったと思います」
3ポイントシュートの成功率を上げるためには、アウトサイド一辺倒でプレーするばいいわけではない。ゴール下への攻めを使い、ディフェンスを収縮させることが重要だ。だが、今の日本はドライブでインサイドアタックの軸を作っているため、渡嘉敷がゴール下でポジションを取ってもパスが入らない。
「自分がゴール下にいることでスペーシングの邪魔になっているのでは」などと考えた結果、渡嘉敷は自らが変化することを選択した。「オーストラリアは自分についていた選手が大きかったので、外で待っていた感じです」
渡嘉敷の一番の強みは、スクリーンからのダイブやカットインとの合わせのプレー。長年に渡り積み上げてきた実績がありながら「このスタイルにまだ自信はないですけど、外で打てる部分はポジティブにとらえたいです」と臨機応変にアジャストする柔軟な姿勢と献身性には尊敬しかない。
ここから日本代表がアジアカップや先の大会で成長し、結果を残すためには、チームが渡嘉敷の強みを引き出せるようアジャストすることが重要になってくる。