クリス・ポール

「僕はプレーしたいし、競い合いたいんだ」

グリズリーズではザック・イディーと河村勇輝の『身長差』を示す写真が話題となっているが、スパーズでは223cmのビクター・ウェンバニャマと182cmのクリス・ポールの間で同じことが起こっている。キャリア2年目の20歳とキャリア20年目の39歳が並んで写真を撮影する時、ポールは「どう思う、これ?」と言って周囲を笑わせた。

スパーズの一員となったポールは終始ご機嫌でトレーニングキャンプを過ごしている。毎年この時期そうであるように心身とも準備万端。そして、スパーズで自分が必要とされていることが彼を前向きな気分にさせている。「僕がスパーズを選んだだけじゃなく、スパーズも僕を選んだ」とポールは言う。

「スパーズを選んだのはプレーするためだ。ありきたりな答えだけど、20シーズン目を迎える今、家族と離れて暮らすことを考えると、プレーする機会が欲しい。家族を犠牲にするだけの有意義なシーズンであってほしい。僕はプレーしたいし、競い合いたいんだ。その最高の機会がここスパーズにあった」

昨シーズンのウォリアーズではあくまで『脇役』を演じることになった。出場58試合のうち先発はわずか18で、それもベンチから出て重要な役割を果たすというよりは、ただチームの序列で後ろに回った。ポールはNBAでも屈指の知性を持つポイントガードだが、だからと言って『戦う』という衝動と無縁なわけではない。自分の能力と経験が重んじられ、それに発奮してこそ良いパフォーマンスができる。

過去には恨みも後悔もない。「チームによって状況は違ったけど、僕はそのすべてに感謝している。サンダーでもサンズでもウォリアーズでも良い経験をさせてもらったよ。そして今はここでチャンスを得られることに興奮している。良いシーズンにしたい」

若手が多いチームへの順応に苦労するとは思っていない。むしろ、この時点で順応はかなり進んでいるとポールは言う。「チームのグループチャットに入ったのは1か月ぐらい前かな。バスケをする以外にも多くの時間をすでに一緒に過ごしている。このチームは素晴らしいグループだ。素直にそう思うよ」

スパーズは再建から抜け出す時期に来ている。若いタレントを数多く擁し、そこにウェンバニャマという『超』の付くスター候補が加わった。そのチームにポールは「僕が競争力をもたらしたい」と話す。

「みんな自分の才能を生かして一生懸命にプレーしているけど、それでは十分じゃない。今こそそれを勝利に結び付ける時だ。僕はその手助けをしたい。昨シーズンの試合をたくさん見たけど、少し入れ込みすぎているように感じた。気合いが入っているけど、その後に失速してしまう。そういう時に必要な落ち着きを僕が伝える。若いチームメートたちに自分の意見を言わせて、それをチームとしての成長に繋げたい。それが僕の『ゲーム』だ」