スペイン代表

チーム戦術に個人戦術、選手個々の特徴が噛み合う

スペインは自国開催での世界最終予選を勝ち抜いて、オリンピック出場を決めました。ガソル兄弟がいなくなり、リッキー・ルビオも戻って来ておらず、NBAで活躍しているのはサンティ・アルダマくらいとロスターは少し寂しくなってきましたが、それでもスペインはスペインです。バスケットボールという競技における勝ち方をどこよりも知っているといっても過言ではない巧みな試合運びは健在です。

22歳のウスマン・ガルーバから39歳のルディ・フェルナンデスまで多くの世代にまたがって構成されるロスターですが、誰がプレーしていても変わらぬ戦術力こそがスペインの特徴です。多彩なプレーコールを全員が確実に実行するチーム戦術に、適切なパス判断とポジションチェンジを実行する個人戦術、異なる環境で育ってきたはずの選手たちが持つ共通理解のレベルの高さは、スペインならではの武器です。

そこに個人の特徴も絶妙に絡んできます。ロレンツォ・ブラウンの突破力、セルヒオ・リュリの展開力、アルベルト・ディアスのマンマーク、フェルナンデスのタフな3ポイントシュートにアルダマの軽やかな3ポイントシュート、ウィリー・エルナンゴメスのパワープレー、ガルーバの高速ヘルプ……。チーム戦術の共通理解に加え、異なる個性も見事に発揮され、試合展開に応じて巧みな選手起用をしてきます。

スペインに数々のタイトルをもたらしてきた指揮官セルジョ・スカリオーロは、特定の選手に頼るのではなく、プレータイムをシェアして多彩な展開を作ることを好むヘッドコーチで、スター選手の足りない今大会こそ本領発揮の機会かもしれません。試合展開と相手の特徴に応じて、様々な手段を講じて勝利を手繰り寄せてくるはずです。

ヤニス・アデトクンボのギリシャ、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのカナダ、ジョシュ・ギディーのオーストラリア。グループAのライバルと比較すると『エースの存在感』という点でスペインは大きく劣ります。だからこそ、スペインの試合巧者ぶりが楽しめそうな大会となります。